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2024.04.22|CEOコラム

定額減税は負担の緩和ではない ~CEOコラム[もっと光を]vol.219

 令和6年度税制改正に関する「所得税法等の一部を改正する法律案」の「案」が外れて新たな法律として成立したことは既にご承知のことと思います。改正の趣旨には「賃金の上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を緩和し、物価の上昇を上回る持続的な賃金の上昇が行われる経済の実現を目指す観点から令和6年分における所得税額の特別控除を実施する」と謳われており、いよいよ6月から定額減税が実施されます。

 

 具体的には、令和6年分の所得税から3万円を、令和6年度分の個人住民税から1万円を減税するというものであり、扶養親族も対象となりますから、夫婦と子ども2人の4人世帯であれば、合わせて16万円の減税になるという「あらすじ」はみなさんよくご理解いただいていると思います。また、令和6年分の合計所得金額が1,805万円超の高額所得者は対象外とされていますので、「自分には関係ないや」とシラケている方も少なくないと思います。

 

 ところで、この定額減税の実施にあたっての実務に目を向けますと、「複雑すぎる」、「面倒くさい」、「負担のシワ寄せは誰に」といった怨嗟の声が聞こえてきます。給与所得者の場合、所得税については6月の源泉徴収税額から控除すれば良いと口で言うのは簡単ですが、4人世帯で一気に12万円も引き切れるとは思えません。住民税についても、6月分の特別徴収を行わずに減税後の金額を残り11ヶ月で按分して徴収すると口では説明できても、現場の事務手続きは煩瑣になります。また、減税額そのものを引き切れない場合は、別途給付金を支給するというのですから、一体その事務は誰が担うのでしょうか。

 

 つまり、「賃金上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を緩和する」などと綺麗ゴトを言ったところで、実務の現場では「国民に負担を強いる」のですから、開いた口が塞がりません。減税と給付のいずれが有効な施策かは賛否の分かれるところですが、かつてコロナ給付金の支給を決めた政権は「簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」と力説していたのですから、その答えは明らかです。加えて、マイナンバーの利活用促進策として給付金受取口座の登録制度と絡めれば、不人気の解消にも一役買ったように思うのですが、今の政権にそのような知恵はなさそうです。

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