先週19日、自由民主党は参院選の公約を発表し、物価高対策として1人2万円の給付を明記しました。2万円の根拠は「食費にかかる1年間の消費税負担額が1人2万円程度」だからだそうです。食費というのが食料品支出だけなのか外食費も含むのか、それすら怪しい根拠ですが、いずれにしても国民1人あたりの年間の食費は20万円強というのが自由民主党の見立てのようです。サラリーマンである我々の昼食代が1,000円でも殆どお釣りがない昨今、それだけでも年間20万円を超える支出になるのですから、自由民主党の議員達は算数をもう一度勉強し直した方が良いと思います。
それはともかく、この2万円が物価高対策になり得るかといえば、これまた大いに疑問です。過去の現金給付の使途実態がそれを裏付けています。たとえば、2020年の特別定額給付金(1人10万円)では、消費に使われた割合は2~3割程度に過ぎず、残りはタンス預金に回ったという分析結果が示されています。2009年の定額給付金も同様に消費喚起効果は限定的で、政府自身が「給付の多くが貯蓄に向かった」と総括しています。つまり、一律の現金給付は実体経済への波及効果が乏しく、財政支出に対する効率性が極めて劣後する施策なのです。
それでもなお現金給付にこだわる背景には、有権者への即時的な印象操作、すなわち選挙対策的な思惑が見え隠れします。しかし、これも過去に通用しなかった手法です。麻生政権が定額給付金を打ち出した2009年には自民党が総選挙で大敗を喫し、岸田政権も2021年に打ち出した子育て世帯への10万円給付で支持率が劇的に上昇することはありませんでした。国民は一時金で心を動かされるほど甘くはなく、むしろ「選挙目当て」を見透かした冷笑的視線が強まるだけです。
物価高に喘ぐ中低所得者層に響く政策は何か。それは、給付付き税額控除の拡充や消費税の一時的な引き下げ、あるいはエネルギーや住居費といった固定支出に対する補助など、ターゲットを絞った施策ではないでしょうか。2万円という数字を「食費にかかる1年間の消費税負担額の補填」などと言い換えることで正当性を装っても、その実態は過去に失敗を繰り返した「ばらまき」に他なりません。歴史に学ばず、政策のロジックも経済効果も曖昧な「ばらまき」は天下の愚策と言わざるを得ないのです。