三連休のど真ん中を投票日にするなど政権与党の悪意が垣間見えますが、その日は所用があるため、昨日、最寄りの区役所で期日前投票を済ませてきました。今回の選挙では、物価高対策として「現金給付」や「消費税減税」が争点になっています。いずれも家計の苦しさを訴える声に応えようとする姿勢は理解できますが、これらの政策が本当に物価上昇を抑える有効な手段なのでしょうか。選挙戦の中で叫ばれる「即効性」や「わかりやすさ」が、むしろ経済政策としての本質を見誤らせているのではないかと懸念します。
現金給付は、家計への支援策としては否定できないものの、物価高対策としてはきわめて逆効果です。そもそも物価が上昇している背景には、供給制約やエネルギー価格の高騰に加えて、過剰な需要の存在もあります。ここで現金をばらまけば、短期的に消費は刺激されるものの、需要超過をさらに助長し、物価上昇圧力を強める結果となりかねません。特に食料品や日用品といった価格が上がりやすい品目では、現金給付がかえって価格高騰を促す側面があることを看過できないのです。
一方、消費税減税も物価高対策としては構造的に限界があります。確かに一時的に名目価格を引き下げる効果はありますが、それはあくまで「見かけの価格を下げる」だけで、原材料費や物流コストの高騰という根本要因にはまったく作用しません。しかも、減税は恒久化の圧力が強く、再増税は政治的に極めて困難です。そのため、一時的な対策として導入するには代償が大きく、社会保障の安定財源である消費税を軽々に論ずることは将来に禍根を残すことにもなりかねません。
現金給付や消費税減税は、選挙で支持を得やすい「わかりやすい政策」です。しかし、物価高というコストプッシュ型のインフレに対して、さらなる需要刺激を行うことは火に油を注ぐ行為に等しい逆療法です。中でも現金給付は、分配の名を借りた政治的パフォーマンスに過ぎず、天下の愚策と言わざるをえません。必要なのは、エネルギー価格の安定化や食料の安定供給、低所得者層に的を絞った支援、あるいは負担軽減措置の制度化などであるはずです。というわけで、昨日の期日前投票では政権与党以外の政党に1票を投じてきました。