少子化が止まりません。先週6月4日に厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2024年の出生数は 68 万 6,061 人で、前年の 72 万 7,288 人より 4 万 1,227 人減少し、合計特殊出生率も前年の1.20から1.15 に低下して過去最低になったとのことです。一方、2024年の死亡者数は1,605,298人ですから、出生数との差である人口減少数は919,237人となり、これは香川県の人口910,743人にほぼ匹敵します。つまり、去年1年間で香川県が消滅したとも言えるわけです。さらに、人口が最も少ない鳥取県と島根県は合計でも110万人ほどの人口ですから、いずれこの両県が消滅するに等しい事態が生ずることも時間の問題と言えましょう。
このように加速する人口減少は、財政や社会保障制度に深刻な影響を及ぼします。人口減少は将来的な所得税や住民税といった基幹税の減収に繋がることは言うまでもありません。あるいは、人口構成が変化することによって所得分布も変化し、特に若年労働者の比率が低下することで、消費活動や住宅取得などに伴う税収も減少していきます。加えて、人口流出に悩む地方自治体では、地方交付税やふるさと納税による調整ではもはや対応しきれず、財政の地域間格差はさらに拡大すると予想します。
一方、人口減少が企業の会計方針や中長期の経営計画に影響することも見逃せません。たとえば、減損会計は将来的な市場規模縮小を織り込まざるを得ないでしょうし、収益認識方法の見直しや事業セグメントの再編なども不可避となるでしょう。また、人件費の上昇を背景に、労務コストの管理やインセンティブ設計の最適化が経営の重要課題となります。税務面でも、節税戦略の見直しや法人税制優遇措置(例:中小企業投資促進税制、賃上げ促進税制など)を戦略的に活用する姿勢が財務健全性の鍵を握ります。
人口減少という既に答えの出てしまった現実に対して、私たち会計や税務の専門家に求められるのは、「守り」だけでなく「攻め」の視点だと思います。企業が社会的な課題にどのように向き合っているかを可視化するとともに、家族構成やライフステージの多様化に伴って相続や贈与、事業承継などの分野でも常に必要とされるアドバイスを提供していかなければ、私たち自身が生き残れない時代になりました。人口減少時代にこそ、私たち専門家の真価が問われると言ってもよいのかもしれません。