Menu

Column

スタッフコラム

全拠点
2025.06.02|CEOコラム

問われているのは伝統の固持ではなく政治の覚悟 ~CEOコラム[もっと光を]vol.278

 選択的夫婦別姓の導入をめぐる議論が遅々として進みません。某全国紙の世論調査では賛成63%に対して反対が29%と、国民の支持はすでに多数派になっている上に、昨年10月には国連女性差別撤廃委員会が選択的夫婦別姓を可能にする法改正を行うよう日本政府に勧告を出したことは記憶に新しいところです。それにもかかわらず、法改正が進まない現状は憂うべき状況と言わざるをえません。

 

 制度導入の利点は明快です。改姓による銀行口座やパスポート名義の変更などの煩雑な手続きが不要になり、さらに改姓による職業上の実績やアイデンティティの喪失を防ぐことができます。国際結婚や海外出張でも氏名不一致のトラブルを減らせますし、そもそも同一の姓を望む夫婦は従来どおり同姓を選べる「選択制」にすぎないのですから反対する意味が理解不能です。それでも反対論者は「家族の一体感が崩れる」とか「戸籍が混乱する」、「子どもがかわいそう」といった情緒的な懸念を声高に叫んでいるようです。

 

 現在、わが国で党名に「自由」を掲げる政党は自由民主党だけですが、同党が選択的夫婦別姓に対して曖昧な態度を取り続けることで、党名と政策との間に大きな矛盾が生じていることを指摘せざるを得ません。同党は党内保守派の反対論を理由に30年にわたって結論を先送りにしてきました。そして、「旧姓の通称使用拡充」で問題を糊塗しようとしています。しかし、通称は文字通り通称であって法的効力が乏しく、パスポートや不動産登記では結局戸籍姓に縛られます。選択的夫婦別姓という最小限の選択的自由すら認めようとしない政党に「自由」の党名を掲げる資格などありません。

 

 家族観が多様化した現代において求められる姿勢は、旧態依然とした価値観の押し付けではなく「選択肢の拡充」であるべきです。小さな改革にさえ躊躇して棚上げにするようでは、少子化やジェンダー平等といった、より大きな課題に向き合うことなどできないでしょう。自由民主党が本当に家族を大切に考えるのであれば、明治期の制度に固執せず、国民一人ひとりの尊厳を支える法制度を速やかに整備すべきです。問われているのは伝統の固持ではなく政治の覚悟なのです。

メールマガジン
登録
お見積り
ご相談