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2026.03.09|CEOコラム

すぐやる、何でもやる、バレるまでやる ~CEOコラム[もっと光を]vol.318

 企業には立派な理念や行動指針が掲げられているものです。しかし、不祥事が発覚した瞬間、それらが強烈な皮肉に変わることを知っておかなければなりません。今回公表されたニデック株式会社の外部調査報告書を読むと、まさにその典型例と言ってよいでしょう。この報告書が描き出している会計不正の構図を一行で言い表すなら、「すぐやる、何でもやる、バレるまでやる」です。そこにあるのは偶発的な会計処理の誤りではなく、業績をよく見せるために数字を恣意的に操作することを許した、極めて危うい企業体質です。

 

 問題の核心は難しい会計理論などではありません。損失の計上を先送りし、都合の悪い評価を避け、結果として利益を水増しするといった極めて稚拙な手口の積み重ねです。数字を現実に合わせるのではなく、現実を数字に合わせようとする発想と言い換えてもよいでしょう。報告書が示しているのは、そのような処理が単発のものではなく、組織の判断として繰り返されていた事実です。こうした行為が続けば、会計は企業活動の記録ではなく、業績目標を守るための演出装置へと変質します。そこに企業統治の健全性を期待することは、残念ながらできません。

 

 この報告書を読み進めるほど浮かび上がるのは、業績目標を最優先するトップの意向とそれを背景に醸成された組織文化、そして、それらに疑問を差し挟むことを許さない空気です。強いリーダーシップは企業を成長させる原動力にもなりますが、ときに組織を誤った方向へ導く反動力にもなります。結果として、会計は事実を記録する仕組みではなく、業績を守るための道具と化していきます。数字を創ることが組織の使命になれば、会計の規律は蔑ろにされ、不都合な真実は隠蔽されます。それが長く続くほど、不正は特別な逸脱ではなく、組織の日常へと溶け込んでいくのです。そして、気がついたときには、会計は実態を映す鏡ではなく、業績を飾る看板に堕していくのです。

 

 企業が不祥事を起こした後には、決まって同じ言葉が並びます。「深く反省する、再発防止に努める、ガバナンスを強化する」です。しかし、問われるべきは、不正が明らかになった後の対応ではなく、なぜそれが続いたのか、なぜ誰も止めなかったのかという根本原因なのです。企業の信頼は、立派な理念や勇ましいスローガンで守られるものではありません。むしろ、それらが現実と乖離しているとき、言葉は思いがけない形で現実を言い当ててしまいます。それが「すぐやる、何でもやる、バレるまでやる」なのです。

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