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2026.06.01|前CEOコラム

真のプロフェッショナルとは何か ~前CEOコラム[もっと光を]vol.330

 医師は人の命を救うことを使命とする職業です。そのため社会は、医師に対して高度な知識や技術だけでなく、高い倫理観と責任感を求めています。もちろん、どれほど優れた医師であっても、患者を救えないことはあります。しかし一方で、人命を預かるという重大な職責を担う以上、その結果に対して一般の職業人以上の責任が求められることもまた事実です。専門職とは特権を与えられた存在ではなく、その専門性に見合う責任を引き受ける存在だからです。

 

 先週5月29日、東京女子医科大学病院で2014年に発生した小児患者死亡事故について、担当医師に有罪判決が言い渡されました。判決後に伝えられる医師側の主張からは、「判決は現場を理解していない」、「判断は誤っている」といった自己弁護の色彩が強く感じられます。もちろん、自らの正当性を主張することは自由です。しかし、その前に語られるべきは、結果として幼い命が失われたことへの痛切な反省や、自らの責任をどう受け止めているのかという言葉のはずです。どうしても拭えない違和感は、有罪判決を争うことの是非ではなく、医師としての倫理観と責任感の欠如なのです。

 

 人命を預かる専門職にとって、本来問われるべきは法廷での勝敗ではなく、自らの職責に対する向き合い方です。たとえ過失の認識がなくとも、幼い命の未来が絶たれたことについて裁判所が過失を認定したのであれば、その重みを受け止める覚悟が求められます。しかし、報道からは、自らの立場や名誉を守ることを優先し、責任を引き受けようとする覚悟は見えてきません。人命に関わる専門職である医師であればこそ、誰よりも高度な倫理的責任が求められるはずです。控訴すること自体を非難はしませんが、法律上の権利を行使することと、プロフェッショナルとしての責任を果たすことは決して同じではありません。

 

 プロフェッショナルを支えるのは権利ではなく矜持です。真のプロフェッショナルとは、失敗しない人ではありません。失敗や事故が起きたとき、その結果から逃げず、自ら責任を引き受ける人です。社会が医師に求めているのは、巧みな法的主張ではなく、人命を預かる者としての覚悟と責任感です。人命を救うためにメスを持つ資格は国家から与えられます。しかし、人命を預かる者としての矜持は自らが獲得しなければならないものです。真のプロフェッショナルとは何か。その答えは、権利を守る姿勢ではなく、責任を引き受ける覚悟の中にあるのではないでしょうか。

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