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2025.05.05|CEOコラム

FMH&CX第三者委員会報告書に対する日本取締役協会の声明 ~CEOコラム[もっと光を]vol.274

 フジ・メディア・ホールディングス(FMH)およびその子会社であるフジテレビジョン(CX)におけるコーポレートガバナンスの問題について、第三者委員会の調査報告書が深刻な実態を明らかにしたことは既にご承知の通りです。特にFMHの社外取締役監査等委員がCXの監査役を「全員兼任」している点については、自己監査の懸念が強く指摘されています。これは、監査機能が本来果たすべきチェック機能を損なうものであり、子会社の問題が親会社に正しく報告されない可能性を孕む危険な状態にあると言えます。会社法には反していないとはいえ、監査の公正性や客観性という観点からは極めて不適切な体制と言わざるを得ません。

 

 こうした実態に対し、日本取締役協会は声明を公表し、ガバナンス機能の不全の根本原因を鋭く指摘しています。とりわけ、形式的には制度が整っていても、実質的には「フジサンケイグループ」という非法人格の集合体において、一部の人物に権力が集中していた異常な構造が、ガバナンスを形骸化させていたことが問題視されています。これは、株主のみならず、取引先や従業員など広範なステークホルダーの信頼を損ねる行為であり、上場企業としての社会的責任と適格性に深刻な疑問を投げかけるものです。

 

 また、監査活動が財務や経理といった限定的な分野に偏っており、人権侵害やハラスメントといった非財務リスクへの対応が極めて不十分であったことも明らかにされています。監査等委員や監査役がこれらの問題を把握しておらず、適切な対応がとられていなかったという事実は、再発防止への意識の欠如を示すものです。加えて、FMHの監査等委員会の構成における人的な独立性の欠如も指摘されており、組織として実効性ある監査を行う体制が根本から問われていると言っても過言ではありません。

 

 現代のコーポレートガバナンスにおいては、「形式の整備」だけでなく、「実質的な運用の透明性」や「情報の流通性・双方向性」が極めて重要です。そのためには、今回日本取締役協会が提言した、最高監査責任者(CAE)の新設や二重の報告ラインの確立、監査機能の独立性の確保、取締役の選任プロセスの透明化といった施策は、デジタル時代のガバナンス強化においても合理的かつ有効なアプローチであると言えましょう。また、人権尊重を経営の中核に据えるという視点も、今後の企業価値創造においては不可欠であり、経営者自らがその責任を認識し、実行に移していくことが何より求められます。

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