Column
スタッフコラム
セダンやクーペの未来-市場環境の変化への対応について考える~週刊ひかり vol.18
京アニ放火事件から10日が過ぎ、犠牲者は35人になったと報じられています。想像を絶する凄惨な事件に言葉もありませんが、亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、未だ病床で懸命の治療を受けておられる皆様の一日も早いご快復を祈念するばかりです。
この事件では、犯人とされる男も火傷で重篤な状態にあると聞きます。報道で知る限りですが、ガソリンをバケツで撒いて放火したというのですから、犯人が返り血ならぬ返り火を浴びることは当然です。なにしろ、ガソリンは常温でも容易に気化して爆発的に引火しますから、火を着けて逃げても逃げきれるものではありません。誤解を恐れずに言えば、建物自体がエンジンのシリンダーと同様の状態になり、そこに充満した気化ガソリンに点火すれば巨大なピストンを押し下げるだけの大きな爆発圧力が発生することはガソリンエンジンに対する少しの知識があれば容易に分かることですが、犯人の男にはそれすらの知識もなかったということでしょう。
それはともかく、昨今ガソリンエンジンをめぐる環境は厳しさを増しつつあります。ハイブリッド車や電気自動車の増殖に反比例する形でガソリンスタンドが数を減らしつつあり、京都市内でも閉鎖されるスタンドが相次いでいます。数を減らしつつあるといえば、いわゆるセダンやクーペといったカテゴリーのクルマもとんと売れなくなったようで、かつてはトヨタの看板車種であったマークⅡに由来するマークXは年内での生産中止が決まり、一世を風靡した日産のスカイラインも販売不振に喘いでいます。
セダンやクーペが衰退した理由はいくつか考えられますが、クルマの価格が物価水準から見て相対的に安くなり日常生活の足として普段使いされるようになったことや運転免許保有者の女性比率が高まったことも一因と言えるでしょう。例えば、遡ること約50年前の1966年に発売された初代のダットサン・サニーの価格は46万円でしたが、この金額を当時の大卒初任給をベースに現在の価格に換算すると400万円近くにもなります。運転免許保有者の女性比率は現在では45%ですが、1966年当時は僅か10%程度でした。つまり、かつてのクルマは贅沢品で、ハンドルを握る男性が自分の趣味でセダンやクーペを選んでいたのです。ところが、今はクルマの価格が割安になって女性の運転免許保有者も増えましたから、クルマ選びの基準が経済性+女性+家族目線になります。そうなれば、従来のカッコ良さとか走行性能などではなく、燃費の良さや運転のし易さが重視され、あるいは大きな移動空間を提供するミニバンが好まれるのも当然の流れといえます。このようにセダンやクーペをめぐる環境が大きく変わる中で、マークXやスカイラインなどは顧客を奪われていったというわけです。
市場環境、あるいは経営環境というものはめまぐるしく変化します。その変化に対応できなければ、生き残ることができないという意味では、私たち公認会計士や税理士とて決して例外ではありません。変化を機敏にキャッチし、それに首尾良く対応していくことこそが経営者の責務だと再認識しつつ、筆者が先日乗り替えたクルマはガソリンエンジンのみで四輪を駆動する2ドアクーペであることを告白しておきます(^_^)
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