Column
スタッフコラム
語源を知っていますか-西洋思想の理解と聖書~週刊ひかり vol.21
税の語源については、拙著「新・くらしの税金百科」の中でも説明しているとおり、ノ木偏が農作物を示し、旁の兌が交換の意味であることから、農作物を社会費用の負担分として交換に供する、つまり国家等に納めることを表しています
一方、英語のtaxについても、「tangible」つまり「触る・評価する」に由来します。身近な例でいうと、私たちが利用するタクシーにも通じるところがあって、タクシーは「taximeter cab」の略ですが、その意味は「(金銭)評価に対応する分だけの距離を走るクルマ」のことです。したがって、taxも「評価(収入)に対応する負担」というわけです。
ところで、納税申告書のことを英語では「tax return」といいます。なぜ「tax report」や「tax declaration」とは言わないのでしょうか。これには聖書の存在が大きく影響していると言われています。みなさんは、「マルコによる福音書」の12章14節以下に次のような記述があることをご存じでしょうか。
-彼らはイエスに言った、「先生、カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか」。するとイエスは言われた、「なぜわたしを試そうとするのか。デナリを持ってきて見せなさい」。 彼らはそれを持ってきた。そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。彼らは「カイザルのです」と答えた。するとイエスは言われた、「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。彼らはイエスに驚嘆した-
この「返しなさい」が returnだというわけです。 時の支配者に納税することは体制を容認することになる一方、納税を拒めば体制に背くものと見なされる。あたかも踏絵のような意地の悪い質問に見事な答えが用意されたわけですが、これが「tax return」の由来という説が有力です。キリスト教文化に馴染みが薄い私たちですが、西洋思想の一端を理解する上で聖書に関して少し知っておくことも大事かなと思わせるエピソードの一つです。
Related Article関連記事
-
CEOコラム全拠点2025年6月16日
新京都駅の誕生か?-北陸新幹線延伸ルートの行方 ~CEOコラム[もっと光を]vol.280
-
CEOコラム全拠点2025年6月9日
人口減少時代に問われる真価 ~CEOコラム[もっと光を]vol.279
-
CEOコラム全拠点2025年6月2日
問われているのは伝統の固持ではなく政治の覚悟 ~CEOコラム[もっと光を]vol.278
-
CEOコラム全拠点2025年5月26日
年金改革法案について ~CEOコラム[もっと光を]vol.277
-
CEOコラム全拠点2025年5月19日
「経済学の訓練を受けた人」による真摯な議論 ~CEOコラム[もっと光を]vol.276
-
CEOコラム全拠点2025年5月12日
一事が万事 ~CEOコラム[もっと光を]vol.275
-
CEOコラム全拠点2025年5月5日
FMH&CX第三者委員会報告書に対する日本取締役協会の声明 ~CEOコラム[もっと光を]vol.274
-
CEOコラム全拠点2025年4月28日
「税」の違いと共通項 ~CEOコラム[もっと光を]vol.273
-
CEOコラム全拠点2025年4月21日
装いを一新した「相続オフィス」 ~CEOコラム[もっと光を]vol.272
-
CEOコラム全拠点2025年4月14日
明日、滋賀事務所が移転します ~CEOコラム[もっと光を]vol.271