現在、全国で国勢調査が行われています。筆者も先日オンラインで回答を済ませました。国勢調査は5年に一度、すべての国民を対象に実施される、最も包括的な統計調査です。その目的は単なる人口動向の把握にとどまらず、行政や経済政策の基礎データを提供することにあります。選挙区の区割りや社会保障制度の設計をはじめ、「税」の分野においても国勢調査の結果は大きな影響を与えています。例えば、地方交付税の算定や地方消費税の配分といった、税の公平を支える制度の根幹に国勢調査のデータが欠かせないのです。
地方交付税は、ご承知のように地域ごとの財政力の格差を調整するための制度です。自治体の財源は、地域経済や人口構成によって大きく異なります。たとえば税収の多い都市部と人口が減少する地方では、同じ行政サービスを提供するために必要な費用が大きく違います。そのため国は、国勢調査で得られる人口・世帯数・年齢構成などのデータをもとに、各自治体の「基準財政需要額」を算定して各自治体への交付額を決めます。つまり、ひとり一人の生活の姿が、そのまま地方への税の配分に反映されているのです。
さらに、国勢調査のデータは、地方消費税の配分にも利用されています。地方消費税では、モノやサービスが消費された地域と税収が帰属する地域をできるだけ一致させるため、「精算基準」という配分ルールが設けられています。この精算基準の算定には、小売年間販売額(商業統計調査)やサービス業対個人事業収入額(経済センサス活動調査)と並んで、国勢調査による人口データが重要な指標として使われています。つまり、地域の人口構造が消費構造を通して税収配分を左右しているのです。
こうして見ると、国勢調査は単なる統計調査ではなく、税の公平性を支える「見えない土台」ともいえます。人口の動きが地方財政のバランスを変え、消費行動の変化が税の流れを動かす時代です。これからは、国勢調査の精度を保ちつつ、マイナンバーや電子決済データなどと連携し、より即時性の高いデータをもとにした財政運営が求められるでしょう。税の公平を支えるのは、社会の実像を映し出す正確な「数字」なのです。その意味でも、みなさん、国勢調査に必ず回答しましょうね(笑)