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2022.12.19|CEOコラム

岸田ノートにはメモされていない言葉 ~CEOコラム[もっと光を]vol.150

 年末恒例となっている与党による翌年度税制改正大綱が今年も先週16日に公表されました。「10年前、自由民主党・公明党は政権与党の座を取り戻した」という唐突な書き出しで始まる令和5年度版に、何で今さら10年前の政権交代の話を持ち出すのか、その意図を測りかねますが、「2,000 兆円に及ぶ個人金融資産、500兆円に及ぶ企業の内部留保(中略)、こうした資金や資産に光を当て…」と続くメッセージからは増税に軸足を置いた内容であることが読み取れます。

 

 そして、「令和5年度税制改正においては、これまで不十分だったと言わざるを得ない分野に大胆に資金を巡らせることにより、個人や企業、そして地域に眠るポテンシャルを最大限引き出すとのメッセージを税制において具現化した」として具体的な内容に言及する一方で、これまた唐突に「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」なるものが登場し、法人税、所得税及びたばこ税の増税について述べられています。

 

 昨今の国際情勢、とりわけ武力で隣国を侵略する国家やミサイル開発に躍起になる国家が近隣に存在するという現実を目の当たりにして、我が国にとっても防衛力の強化が喫緊の課題であることに異論はありません。しかし、その財源を前出の3税目に求めるに当たって十分な議論がなされたのかどうか疑問なしとしません。それどころか、復興所得税の導入に際して課税期間の延長を主張し、復興財源としてのたばこ税増税に反対した自民党が、その手のひらを返すような姿勢を打ち出したことには強い違和感を覚えます。

 

 振り返りますと、復興所得税は当初4%の付加税率を10年間継続するという制度設計であったにもかかわらず、当時の野党である自民党が「期間を25年にして1年あたり1.6%にすべきだ」と反対したのでした。確かに、4%×10年÷25年は1.6%になりますが、その一方でたばこ税を復興財源にすることに強く反対したために、結局その分を復興所得税に0.5%上乗せするという形にせざるを得なくなったのです。つまり、期間を引き延ばしておいて都合が悪くなれば「転用」、増税に強く反対しながら都合が悪くなれば「財源化」。これを世間では「ご都合主義」というのですが、どうやら岸田ノートにはその言葉はメモされていないようです。

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