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スタッフコラム

京都事務所
2025.12.01|経営

中小企業の人材定着と組織活性化のポイント─二要因理論から読み解く─

人材不足が深刻化する中、
「どうすれば社員のモチベーションを高め、定着してもらえるのか」
というご相談を、日々多くの経営者の方からいただきます。
給与を上げ、福利厚生を充実させ、働きやすい制度を整えても、
なぜか社員が主体的に動いてくれない——。

その疑問を解く鍵となるのが、
ハーズバーグの「動機づけ衛生理論(二要因理論)」です。
本稿では、この理論を参考に、
中小企業の人材定着と組織の活性化につながるヒントをご紹介します。

1.二要因理論とは

ハーズバーグは、仕事に対する満足と不満足は同じ軸上にあるのではなく、
独立した2つの要因が存在すると唱えました。

 

① 衛生要因(Hygiene Factors)— 不満を防ぐために必要な条件

・給与・賞与

・労働条件(残業・休日)

・人間関係

・評価制度・企業方針

・職場環境・福利厚生

不足すると不満が生まれるが、充足しても意欲向上には直接つながらない
のが特徴です。

つまり、福利厚生を厚くしても「やる気が出る社員」になるわけではありません。

 

 

② 動機づけ要因(Motivators)— やる気と成長を生む要素

・達成感

・承認・評価

・仕事そのものの意義

・裁量・責任

・成長機会・キャリア


満たされれば仕事への満足と意欲が高まる
要素です。しかし、欠けても必ずしも不満には直結しません。

2.中小企業にとっての示唆

多くの企業が改善に力を入れるのは衛生要因です。

しかし、「衛生要因の改善=モチベーション向上」ではないという点が重要です。

給与を上げても、設備を新しくしても、制度を整えても——

「受け身で指示待ちの社員」のまま変わらないケースはまさにここに理由があります。

3.実務での落とし込み

二要因理論を踏まえると、組織課題に対して「まず何から取り組むべきか」がより明確になります。

特に中小企業では、衛生要因と動機づけ要因のどちらに課題の“根っこ”があるのかを見極めることが、

限られた経営資源を有効に活かすうえで不可欠です。

 

以下は、よく見られる組織課題を二要因理論の観点から整理したものです。

 

課題 有効なアプローチ
離職率の高さ 衛生要因の整理(評価制度、人間関係、労務管理の見直し)など
主体的行動が少ない 動機づけ要因の設計(権限移譲、役割付与、承認の仕組み)など
若手の成長不足 挑戦機会・達成体験・メンター制度の導入 など
企業文化の弱さ 仕事の意義・存在理由(パーパス)の共有 など

 

4.よくある誤解

-とにかく待遇を改善すれば辞めなくなるはず。-

この考え方は危険です。

 

衛生要因は最低条件であり、いくら強化しても「やりたいから働く社員」は生まれません。

むしろ、待遇改善は慣れてしまえば現状維持のラインが上がるだけになることもあります。

5.おわりに

人が自発的に動く組織とは、

「不満が少なく、やりがいに満ちた環境」を両輪で整えた企業です。

 

中小企業こそ、大企業には真似できない

・社長との距離の近さ

・役割の大きさ

・仕事の意義を実感しやすい文化

といった動機づけ要因の優位性があります。

 

制度や給与を整えるだけではなく、

「社員が自分の仕事に誇りと成長を感じられる仕掛け」を意識的に設計すること。

それが、これからの人材戦略の核心だと考えています。

 

ひかり税理士法人では、人事コンサルの専門部隊もございます。

人事評価制度や理念浸透の仕組みづくりだけでなく、
その前段階としてのインタビューやサーベイを通じて、組織に潜む“見えにくい課題”の発掘も支援しています。

組織の状況やフェーズによって必要な打ち手は異なります。
御社ならではの課題の発見・整理から、
最適な人事制度の構築・運用まで伴走いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

(文責:京都事務所 組織人事コンサル部 公手)

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