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スタッフコラム

京都事務所
2025.09.01|経営

中小企業経営者こそ活用するべき「生成AI」

経営者は「決める」ことが重要な仕事です。
ところが現場では、会議の要点整理、見積や提案書の初稿づくり、社内規程の確認といった「決める前の下準備」に、驚くほど時間が吸われます。
生成AIは、この下準備を数十秒で片づける下書き係として使うのが正解です。
現在の生成AIは完璧でも万能でもありませんが、「ゼロから作る」苦労を減らし、人がすべき判断に時間を取り戻してくれる優秀な部下。この部下をどう育てて活用するかのコツを、本コラムでは考えてみたいと思います。

1.生成AIで出来ること・出来ないこと

まず、出来ることから。
・会議や商談は、録音を文字に起こしてAIに渡すと、要点・宿題・担当・期限までを一気に並べてくれます。
・見積や提案書は、数量・納期・注意点など前提を入れるだけで、言い回しの異なる案を複数つくります。
・社内の就業規則や経費規程、作業手順を読ませておけば、「旅費は1泊いくらまで?」のような問いにも、どの資料のどのページかという根拠付きで返してくれます。

上記のように、社外のあいまいな情報に頼らず、自社の決めごとを根拠に答えさせる、ということが現在は実現できます。

 

一方で、AIは「決める」役ではありません。法務的な含みや社外への影響を読み・考えるのは人の仕事です。
だからこそ、運用の芯に三つの約束を置くことを推奨します。

第一に【入力禁止】
顧客名、個人情報、価格の生データ、未発表情報、他社と交わしたNDA対象など、外に出ると困るものは原則入れない。
どうしても必要なときは社内専用の安全な環境で、やり取りは必ずログに残します。

第二に【根拠必須】
AIの答えには、参照した資料名・ページ・更新日・該当文を付ける。根拠が出せないものは仮説扱いにして、人が確認。

第三に【人の最終責任】
AIは下書き係、最終判断は人。社外に出る文書や契約・価格は、作成者とは別の目で確認してから出す。
2人の2つの目ということでセキュリティ用語として「4アイズ」と言われたりしますが、この「4アイズ」を守るだけで、事故の芽はぐっと小さくなります。

出来ること・出来ないことを理解して生成AIの推進を行うことが重要なポイントです。

2.生成AIの費用対効果

費用対効果はどう考えるか。
仮に、営業5名が各30分/日を短縮し、月20日稼働だとすると、月に50時間の浮きです。
時給換算で価値を置けば、AIの利用料や教育・運用コストを差し引いてもプラスになりやすいでしょう。
しかも、初稿の質が揃うことで“言い回しに悩む時間”や“差し戻し”が減ります。

数字は会社によって変わりますが、1つの業務に集中して30日で前後比較すれば、導入の是非は経営判断できるはずです。

3.どうやって導入するのか?

例えばですが、仮に生成AIを社内導入するとするならば、小さくスタートを強くおすすめします。
※前提として、生成AI(ChatGPTでもCopilotでもGeminiでもかまいません)を導入しているものとして考えています。

比較的わかりやすい「議事録要約」か「見積初稿作成」のどちらか一つを例に考えてみましょう。
まずは生成AIを活用する業務を決め、30日間で【勝ち筋】を作り、90日で定着させます。
最初の30日は、「作成時間を半分にする」といった一言の目標を掲げ、3〜5名で毎日使って前後の時間と手戻りを記録します。
次の30日で、社内資料(規程や過去提案など10〜30本)を読み込ませ、根拠(資料名・ページ・更新日)を自動で添付する運用に切り替えます。
同時に、文書のリスクを分類し、重要文書は法務や品質の専門レビュー+役職承認に通す簡易ワークフローをつくります。
最後の30日で、成功した指示文(プロンプト)をテンプレ集にして横展開し、利用回数・時間短縮・差し戻し率・禁止情報ブロック件数を月次ダッシュボードで見える化します。
経営者としては、「AIは下書き、入力禁止・根拠必須・最後は人」の三点を口ぐせにし、現場にA4一枚のルールを配っておきましょう。

もちろん、万一の初動も決めておきます。

万が一の際の動き方としては、

【1】利用を一時停止し、誰が何をいつどこへ出したかをログで確認。

【2】影響範囲(顧客・取引・法務)を特定し、所定のテンプレで一次連絡。

【3】証跡を保全し、禁止語彙の強化や承認ステップの追加といった再発防止までを一気にやる。

ここまでが“もしも”の型です。準備しておけば、起きないし、起きても最小で済みます。

 

技術の話は最低限で構いません。

「プロンプト=指示文」は、①目的、②前提(条件・禁止)、③形式(箇条書き/表/文字数)、④根拠の出し方、の四つを決めておけばブレません。

「RAG=社内資料参照」は、自社の正解をAIに持たせる工夫です。

公開のチャットは“試す”には速いが入力禁止が多い。

腰を据えて使うなら、権限やログ、データ保持を設定できる社内専用のAIを導入する。この距離感が、スピードと安全の両立に効きます。

4.まとめ

結局のところ、生成AIは「魔法の箱」ではなく、速くてブレない下書き係です。
下書きを速くし、確認を楽にし、判断を人に集中させる。
これさえ守れば、会社のスピードは上がり、事故は起きません。
明日からできることは小さな業務を、三つの約束【入力禁止・根拠必須・最後は人】のもとで回してみること。
そして30日後に、時間と品質の数字を見て次に広げるか決めること。
難しいことはいりません。まず【1業務・1テンプレ・1チェックリスト】で始めることがコツです。
空いた時間は、経営者しかできない「決める」仕事に使いましょう。

また、ひかり税理士法人のDXコンサル部では中小企業の皆様に向けて、生成AIの活用を支援するメニューも備えています。
自社で生成AI導入が上手くいかない・どうしていいかわからないという経営者の皆様のご支援も承りますので、ご相談やご支援のお気軽にご用命ください。

 

 (文責:京都事務所 上田)

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