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スタッフコラム

京都事務所
2021.01.12|会計 経営

コロナ禍における役員報酬の改定について

 2020年は新型コロナウイルスに振り回され散々な一年でしたが、2021年も年始より感染者の急増、一部では緊急事態宣言の発令がされつつあり、引き続き新型コロナウイルスに振り回される一年になりそうです。
 さて、このような業績回復の見通しがない状況において、経営や従業員の雇用を維持するために、役員報酬の減額を検討されている経営者の方もいらっしゃるかと思います。
 役員報酬の改定については、利益調整防止の観点等から一定のルールに従って改定しない場合には、役員報酬の一部が法人税の税金計算上の費用(=損金と言います)として認められなくなってしまいます。
 そこで今回は、役員報酬のうち一般的な中小企業において毎月支給される役員報酬である定期同額給与について、税法上正しく改定を行うために、その基本的な考え方とコロナ禍における改定タイミングを解説していきたいと思います。

1.定期同額給与の基本的な考え方

 まず、一口に役員報酬といっても、税法上下記の通り区分されています。

  ①定期同額給与
  ②事前確定届出給与
  ③業績連動給与

 

 一般的な中小企業において、毎月支給されている役員報酬は①の定期同額給与に該当しています。
 定期同額給与とは、簡単に言うと、役員に支給する報酬で一定の改定を除いて毎月同額を支給する場合には、その金額を法人税の税金計算上の費用(=損金と言います)として計上することができる役員報酬を言います。

 では、その一定の改定とはどのようなものが該当するのかを次で確認していきます。

2.定期同額給与の改定タイミングは?

 税法上認められている定期同額給与の改定は次の通りです(内容は一部省略しています) 。
 なお、ここでいう役員報酬とは、役員に対して毎月支給する報酬を言いますのでご注意ください。

 

①定時株主総会等による通常の改定
 その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までにされる定期給与の額の改定
 (期間については一部例外あり)

 

②臨時改定事由
 その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定

 

③業績悪化改定事由
 その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定

 

 定期同額給与を改定する場合には、上記のいずれかの事由に該当するような改定でなければ、その役員報酬の一部が定期同額給与に該当せず、その一部分については損金として認められなくなってしまいます(全額が損金に計上することができないわけではないです)。
 平時においては、①、すなわち新たな事業年度がスタートして3カ月以内に株主総会等において役員報酬の改定を決議することで、その役員報酬が定期同額給与に該当し、全額を損金として計上することが可能になります。
 コロナ禍においても、新たな事業年度がスタートして3ヵ月を経過していないということであれば、上記の①の事由により役員報酬の改定を行うこととなります。

 では、新たな事業年度がスタートしてすでに3ヵ月を経過している場合には、役員報酬の改定ができないかというとそんなことはなく、上記の②③のいずれかに該当するときは、3ヵ月経過後の役員報酬の改定であっても、その役員報酬は定期同額給与に該当し、全額を損金として計上することが可能になっています。

 そこで、次にコロナ禍と②③の改定事由との関係について見ていきたいと思います。

3.コロナ禍と臨時改定事由・業績悪化改定事由との関係について

 さて、コロナ禍と臨時改定事由・業績悪化改定事由との関係については、国税庁が例を挙げて見解を示していますので、それぞれ見ていきます。

 

○コロナ禍と臨時改定事由との関係について
 臨時改定事由については、コロナ禍との関係を国税庁が直接見解を述べているわけではありませんが、国税庁が公表している「役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)」の17・18Pにて、病気のため職務が執行できない場合の取扱いを下記のように述べています。

 「役員が病気で入院したことにより当初予定されていた職務の執行が一部できないこととなった場合に、役員給与の額を減額することは臨時改定事由による改定と認められます。また、従前と同様の職務の執行が可能となった場合に、入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定も臨時改定事由による改定と認められます。(国税庁回答)」 

 

 ※参考 「役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)」
 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

 

 もし役員が新型コロナウイルスに感染し、かつ、隔離や治療のために業務を行うことが難しくなった場合には、その役員報酬の改定は臨時改定事由に該当し、全額を定期同額給与として損金に計上することができると考えられます。

 

○コロナ禍と業績悪化改定事由との関係について
 業績悪化改定事由については、国税庁が公表している「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」にて、コロナ禍との関係を述べています。

 ※参考 「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」 
  https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/index.htm

 

①業績が悪化した場合の減額改定
 ここでは、イベント開催会社が新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請から中止を行ったため、業績が悪化したケースについて述べられています。
 これによれば、上記のような事情で、「業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合」には、その役員報酬の改定は業績悪化事由に該当し、全額を定期同額給与として損金に計上することができるのとのことです。
 
②業績悪化が見込まれる場合の減額改定
 ここでは、観光客関係の会社を例として、新型コロナウイルスの影響により外部環境が著しく悪化している場合においては、実際に業績悪化にまで至っていなくとも、「役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避」と考えられるときには、その役員報酬の改定は業績悪化改定事由に該当し、全額を定期同額給与として損金に計上してもよいと述べています。

4.まとめ

コロナ禍での役員報酬の改定についてまとめると次のようになります。

 

①新たな事業年度開始から3月以内の場合
 →通常の定時株主総会等における改定を行うことで、定期同額給与に該当

 

②新たな事業年度開始から3月を経過している場合
 1.役員が新型コロナウイルスに感染するなど業務を行うことができなくなった場合
  →その改定は臨時改定事由に該当し、定期同額給与と認められる可能性大

 2.新型コロナウイルスの影響により業績悪化した場合・業績悪化が見込まれる場合
  →その改定は業績悪化事由に該当し、定期同額給与と認められる可能性大

 

 さて、ここまで役員報酬の改定について見てきましたが、参考になったでしょうか?
 もし役員報酬の改定を検討されているようでしたら、まずは上記のどの事由に該当するのかを注意深く検証してから行うことをお勧めいたします。
 (文責:京都事務所 高橋)

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