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2026.07.13|お知らせ

警報を止めても、経営危機は消えない ~前CEOコラム[もっと光を]vol.336

 過日、素材メーカー「環境経営総合研究所」の元社長が、粉飾した決算書(会社法上は「決算書」ではなく「計算書類」が正しい表現ですが、報道に合わせて本コラムでも「決算書」とします)を示して日本政策投資銀行から約11億円の融資をだまし取ったとして逮捕されました。その報道から日を置かずして、クレジットカード決済代行会社「全東信」が破綻し、約20年前から粉飾決算を続けていた疑いが明らかになりました。全東信の負債総額は約1259億円に上るとされます。相次ぐ事件は、粉飾が会社を延命する手段ではなく、崩壊を加速させる行為であることを明確に示しています。

 

 全東信は、帳簿上は約25億円の純資産を計上していたようですが、預金残高の水増し、架空債権や実質的に価値のない営業権の計上、加盟店に対する未払立替精算金の未計上などを修正すれば、実態は約605億円の債務超過だった可能性があると報じられています。利益を多少かさ上げしたという程度ではありません。現金、債権、負債という貸借対照表の骨格そのものが、会社の実態から大きく乖離していたことになります。

 

 ここで見過ごしてはならないのは、利益と資金繰りは別物だということです。売上や資産を水増しして利益を仮装することができても、支払日に必要な現金まで生み出せるわけではありません。とりわけ決済代行業では、加盟店に立替金を支払うための資金が事業の生命線です。帳簿上いくら資産超過を装っても、支払うべき資金が尽きれば、事業は継続できません。企業の継続可能性を最終的に決めるのは、粉飾された利益や純資産ではなく、債務を期限どおりに履行することのできる現実の支払能力なのです。

 

 決算書は、経営者に現実を直視させる警報装置です。赤字や債務超過という警報が鳴れば、本来は損失の原因を分析し、金融機関や取引先に実情を説明し、事業の縮小や資本増強などの再建策を講じなければなりません。ところが粉飾は、その警報装置のスイッチを切り、あたかも異常がないように見せかける行為にほかなりません。警報音を消しても、経営危機そのものが消えるわけではありません。それどころか、対応の機会を失わせ、損失を金融機関、取引先、従業員へと拡大させます。粉飾とは会社の寿命を延ばす行為ではなく、再建への道を自ら閉ざし、崩壊を決定的にする行為なのです。

※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。

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