1.医療費控除を受ける
 まず代表的なのは「医療費控除」です。医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告で所得控除を受けられる制度です。
 対象となるのは、病院での診察代や薬代だけでなく、薬局やドラッグストアで購入した処方箋医薬品なども含まれます。
 控除の対象となる金額は、1年間の医療費の合計から保険金などで補てんされた額を差し引き、さらに10万円(または所得金額の5%のいずれか少ない方)を超える部分です(上限は200万円)。例えば、花粉症の薬代や通院費用のほかに、生計を一にする家族の治療費を合わせて年間で30万円を支払った場合、そこから10万円を差し引いた20万円が控除対象となります。この金額に所得税率を掛けた分が税額の軽減につながります。
2.セルフメディケーション税制の活用
 もう一つは「セルフメディケーション税制」です。これは医療費控除の特例で、その年に健康診断や予防接種などを受けて健康の保持増進及び疫病の予防に関する一定の取り組みを行っている人が特定の市販薬を購入した場合に、確定申告で所得控除を受けられる制度です。
 対象となるのは、スイッチOTC医薬品と呼ばれる、医師の処方薬から転用された市販薬です。花粉症の市販薬にも該当するものがあり、一部の対象商品のパッケージには、セルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが記載されています。また、対象とされる医薬品は、購入時のレシートに控除対象であることが記載されています。
 控除の対象となる金額は、対象医薬品の購入額の合計から12,000円を差し引いた金額です(上限は88,000円)。例えば、花粉症シーズンに市販薬をまとめ買いした場合でも、その費用をレシートで保管しておけば、確定申告時に控除を受けられる可能性があります。
3.医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できる?
 ここで注意したいのは、医療費控除とセルフメディケーション税制は同時に使えないという点です。どちらか一方を選択する必要があります。花粉症などの治療費用が比較的高額であれば医療費控除、通院は少なく市販薬が中心であればセルフメディケーション税制を選択するのが一般的です。家庭全体の医療費を合算してみて、どちらを選択するのが有利かを検討してください。
 また、控除を受けるには確定申告が必要です。年末調整では申告することができません。病院の領収書や薬局のレシートは、必ず保管しておきましょう。近年はe-Taxの利用が進み、医療費控除の明細書を作成すれば領収書そのものの提出は不要になりましたが、税務署から求められた場合に備えて5年間は保管しておく必要があります。セルフメディケーション税制を利用する場合は、対象医薬品の購入記録に加えて、健康診断や予防接種を受けたことを証明できる書類(結果通知書や領収書)が必要です。こちらも忘れずに準備しておいてください。
4.森林環境税とは?
 花粉症といえばスギ花粉が大きな原因のひとつですが、スギやヒノキは日本の森林と深い関わりがあります。
 森林環境税は、令和6年度から本格的に導入された新しい税金です。個人住民税均等割と併せて1人年額1,000円が徴収され、その財源は森林の整備や人材育成などに使用されます。木々の間伐や植え替えが進み、将来的に花粉の少ない樹木が植えられることで、花粉症対策にもつながっていくと期待されているのです。
 「税金で花粉症が軽くなることなんてあるの?」と思われるかもしれませんが、長期的な森林整備は確実に花粉の飛散量減少に役立つと言われています。少し先の未来を見据えた取り組みだと考えると、身近な話に感じられるのではないでしょうか。
5.まとめ
 花粉症は多くの人にとって避けられない季節の試練ですが、税金の制度をうまく活用することで、出費の一部を取り戻すことができます。
 「医療費控除」や「セルフメディケーション税制」は少しの準備で使える制度ですし、「森林環境税」は長い目で見れば花粉症軽減にもつながるかもしれません。
 花粉症でお悩みの方、次回の確定申告では、花粉症にかかった費用についてもぜひ振り返ってみてください。
参考URL
・国税庁HP 令和6年確定申告特集
・国税庁HP No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
・総務省HP 森林環境税及び森林環境譲与税
【文責:京都事務所 中澤】
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