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スタッフコラム

2017.11.23|事業承継

ここが変わった!! 『事業承継税制を活用した相続税・贈与税の納税猶予制度』

事業承継ニーズがますます高まる中、円滑な事業承継に対応するため、改正を行い、中小企業の存続のための税制支援が強化されました。

通常事業承継を行う際は、経営者が自社株を後継者に譲渡します。この譲渡に対する税負担は重く、多くの中小企業の経営者の方が世代交代の際、頭を悩ませることとなっております。

そこで、平成21年に『事業承継税制』が創設されたのですが、平成29年度の改正により見直しが行われ、より使いやすい制度となりました。

1.事業承継税制その1 『相続税納税猶予の特例』

経営を承継する後継者が相続した株式については、非上場株式等の価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。後継者が死亡したときや、後継者が次の後継者に贈与したときなどは、猶予された相続税が免除されます。

なお、相続の前から保有していた分も含めて発行済株式総数の3分の2を超えた場合は、その超えた分について特例は適用されません。

 

税負担がかなり軽減されることとなる優遇措置のため、要件がいくつか決められております。主な要件は以下の通りです。

 

  1. 雇用の8割以上を5年間平均で維持していること
  2. 後継者が代表者・筆頭株主であること
  3. 納税猶予の対象となる株式を継続して保有していること
  4. 中小企業者で、上場会社、風俗関連会社、資産管理会社に該当しないこと

2.事業承継税制その2 『贈与税納税猶予の特例』

贈与された株式については、贈与により取得した非上場株式等の価格の全額に対応する贈与税の納税が猶予されます。さらに、先代経営者が死亡した場合などは、猶予された贈与税が免除され、後継者は贈与税を負担することなく自社株の贈与を受けることができます。

 

なお、贈与の前から保有していた分も含めて発行済株式総数の3分の2を超えた場合は、その超えた分について特例は適用されません。

 

要件は上記に加え、以下の要件を満たす必要があります

 

1.先代経営者が代表者を辞任

3.事業承継税制その3 『平成29年度税制改正における変更点』

小規模事業者の雇用要件の見直し
事業承継税制の要件として雇用確保要件がありますが、これは原則として5年平均で従業員数の8割以上を維持するという要件です。

 

人材確保が難しい中、80%維持の雇用維持は高いハードルとなっております。

 

特に従業員が5人未満の企業の場合、この要件を満たすことが難しいとされてきましたが、改正により、計算過程の端数を切り上げていたところを切り捨てとなりました。これにより、従業員が5人未満の企業の従業員が一人減った場合でも雇用要件を満たすことが可能となりました。

 

例えば、切捨てとなったことにより、

2人×80%=1.6人→1人

3人×80%=2.4人→2人

4人×80%=3.2人→3人

となり、一人辞めてしまっても猶予を受けることができるようになり、人手不足になりがちな小規模な企業も雇用要件を満たすことが可能となりました。

 

相続時精算課税制度との併用
これまでは、納税猶予をうけていても、要件を満たせず、突然納税猶予の特例を取り消されていきなり高額な贈与税の支払が発生するといったリスクがありました。

 

その場合の最高税率は55%となっていますが、今回の改正により、相続時精算課税制度との併用が可能となりました。

 

例えば、先代経営者が株式全体の2/3である2億円の株式を贈与して、納税猶予の適用をうけていましたが、要件を満たさなくなり、納税猶予を取り消されることとなった場合、贈与税の納付が約1億300万円発生します。

 

相続時精算課税制度と併用することにより、相続税額は4,860万円となります。一旦贈与税3,500万円納付し、相続税発生時に1360万円納付し精算されます。1億300万円→4,860万円と税負担が大幅に軽減されることとなります。

 

贈与者死亡後の相続税納税猶予の要件緩和
事業承継後5年経過後、先代が死亡した場合に納税猶予制度を受けるためには、中小企業であること、非上場会社であることという要件がありましたが、この要件が廃止されることとなりました。

 

これにより、事業承継後に企業が成長し、大企業・上場企業になったとしても相続税の納税猶予を受けられることとなり、企業の成長を阻害する要件が取り除かれました。

 

災害時のセーフティネット規定の導入

これまで、災害・取引先の倒産という事態に至った場合、雇用要件を満たすことが困難となっていました。

 

今回の改正で、事業承継税制の適用を受けている会社が災害等の被害を受けた場合は雇用要件の免除、取引先が倒産等し、売上高が減少した場合は要件が緩和されることとなりました。

4.まとめ

世の中の高齢化が進む中、中小企業経営者の高齢化も高まり、事業承継を円滑に進めることは経営者にとって必要不可欠です。事業承継税制をうまく活用しきちんと準備することで、次の世代へのバトンタッチをスムーズに行うことが可能となるのです。

 

今回の税制改正で、事業承継税制が使いやすくなった一方、まだまだ事業継続要件や手続き等、複雑な点も多いです。要件を正しく把握し、税務のプロである税理士に相談しながら、適切に手続きを進めるようにしましょう。

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