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スタッフコラム

京都事務所
2024.04.08|事業承継

事業承継を考えるうえで必要なこと「まず何から始める…」

 日本の99.7%を占める中小企業の休廃業・解散件数は、東京商工リサーチのデータによると、2023年は49,788社と過去10年で最高を更新しました。倒産を合算した「退出企業」は58,478件。黒字倒産率は過去最低となっています。コロナ融資の返済開始、原材料高、生産性向上、利益率改善への事業再構築等の取り組み遅れがこのような結果を生み出しているといえます。
同じく東京商工リサーチの2023年「全国社長の年齢」データによると、社長の平均年齢は2009年以降最高の63.76歳。70代以上の社長の構成比は35.5%と年代別で最も高くなっています。
また、社長の年代別で、増収企業は70歳以上の割合が最も低い一方、赤字企業は最も高いという結果が公表されています。
後継者不在の会社が2011年から常に60%超で推移し、休廃業する会社の経営者の年齢の40%以上が70歳以上。事業承継の遅れが浮き彫りになっているというのが現実のデータです。

御社はいかがでしょうか。

1.まず何から始める?

 株価評価や組織再編等のハード面からのアプローチは専門家に任せるとして。

ここからは、現経営者が事業承継を検討するにあたり、していただきたいことを順番に記載致します。

 

2.★ステップ1 現経営者が状況を把握(整理)することから始めましょう。 

 事業承継とは、株式を後継者に渡し、社長を交代すればよい。という簡単なものではありません。

現経営者にしていただきたいことは、下記項目の把握です。頭で考えるだけではなく、人に見せることを前提に文字におこしてみましょう。

 

1、会社、個人に関係なく現時点で考えておられる「悩み」を思いつくままに書き出してください。

 ・人間関係(従業員、一族、後継者は誰等)
 ・経営(取引先、業界の将来、材料高等)
 ・お金(借入返済、税金、相続等)
 ・先送りにしていること(事業承継等)

 

2、書き出した悩みを客観的に見てみましょう。

客観的に見ることで、自ずと何を考えるべきか、優先順位も含めて炙り出されます。それを踏まえて、後継者はいるのでしょうか。会社を引き継ぐのでしょうか。を考えるきっかけとなります。

 

3、会社と個人、それぞれの形のある資産、負債を把握してみましょう。

「事業承継」と「相続」は表裏一体の関係にあります。「会社=経営」と「経営者個人=資産」を切り分ける必要があります。

会社本社の土地を、代表者個人が所有されていることは多いですよね。

 

4、現経営者が考える会社の価値を把握してみましょう。

経営資源といえる、社長しか知りえない虎の巻です。

経営資源とは、ビジネスモデル、経営のうえで一番大切にしていること、生き残ってきた秘訣とは、こだわって残すべきモノ、歴史、自社の強み、今後も絶対に大切にすべきこと等を指します。

 

5、現経営者として、会社の現状を把握したうえで、5年後、10年後の会社と自分の状況を書いてみましょう。

売上高や営業利益、株式異動等、ご自身の趣味。

 

 

 

 

3.★ステップ2 本当に寄り添ってくれる存在(専門家=軍師)を探す。

 私が税理士だからというわけではなく、まず税理士に相談をしてください。

法人の事業の経営状態を把握し、社長個人の所得、資産、家族関係を把握している一番身近な存在は税理士のはずです。

ただし、税理士にも色々な得意分野があります。

月次処理に重きをおいているが、事業承継は得意分野ではない税理士も多いのです。

そのような場合は、ステップ1の資料をもって、他の税理士、日本政策金融公庫、事業承継支援機関、金融機関等複数の意見を聞いてみてください。複数聞いていただくと、社長であれば、実際に自分に寄り添ってくれるのが誰か。判断はつかれるはずです。

会社のメインバンクが言っていることだからと鵜呑みにすることは危険です。

利害が絡むのですから、取引先から相見積もりをとって話をきくのと同じ工程が必要です。

4.★ステップ3 家族や関係者に相談し、情報共有する。

 現経営者が一代で築き上げた会社であっても、親族外承継を検討する場合であっても、必ずご家族と話しあってください。

失礼ながら、現経営者が思い込んでいることも多いのです。実は、義理の息子さんが承継に同意してくれるかもしれません。

後継者に承継すべき経営資源は、「人(経営権)の承継」「資産の承継」「知的資産の承継」の3つと言われています。

これらを承継するには、一般的に5~10年以上かかるといわれており、長丁場です。

現経営者が一人で背負うには長すぎる期間です。家族や関係者と常に情報を共有しましょう。

またご自身が思っているプランとご家族が思っているプラン、専門家・関係者が考えるプランのすり合わせが必要です。

これは会社の今後(事業計画)ということだけではなく、現経営者自身の今後(ライフプラン)を含めたものを指します。

5.★ステップ4 事業承継計画書を作成してみましょう。

 現経営者が考える代表者交代時期を明確にしてみましょう。

経産省が推奨している事業承継計画書は、事業承継期間として一般的に必要と言われる10年をベースにしたものです。

しかし、5年でも3年でもよいと思います。現経営者が一旦作成し、専門家と相談したうえで徐々に作り上げていきましょう。

ある程度、事業承継のプロセスが固まってきたら、金融機関にも相談が必要です。

借入の保証の問題をどうするのか。今後の事業計画を考慮すれば、新たな借入れの検討も必要になるかもしれません。

今後、後継者が金融機関とうまくつきあっていくためにも、関係を築くための場を設けることは大切なことだと思います。

6.★ステップ5 現経営者は覚悟をもって、後継者、事業をサポートしましょう。

 事業承継は、大きく分けて、親族内承継、親族外承継、M&A(株式譲渡)の3種類に分類されます。

どの分類の承継方法であったとしても、現経営者は、現経営者にしか承継できない経営資源の承継を「承継するのだ」という覚悟をもってお伝えください。

後継者の考えを尊重しながら進めるのはなかなか難しいと聞きます。親族内であっても難しいのに、親族外はなおさらです。

しかし、それができるのは現経営者だけなのです。

7.終わりに

 全てを記載することは難しいですが、

今回は現経営者の方が事業承継を考えるうえで必要なことを、ソフト面から記載してみました。

一番大切なことは、ステップ1(現経営者が客観的に把握すること)だと思っています。

65歳から始めても5年経てば、70歳です。やはり早いうちから始めるに、こしたことはありません。

「事業承継」は、現経営者が人生をかけて育ててきた大切な営み(=事業)を、後継者にバトンタッチする失敗の許されない一大プロジェクトです。

ここまで書きましたが、必ずしもすべての会社が事業承継をすべきだとは思っていません。

会社の財務状況、経営状況を考慮すれば、「廃業」が正しい選択であることもあります。

会社が次のステップに進むために、ステップ1~3の過程は、事業承継に限らず有効です。

誤った経営判断を避けるためにも、ご検討いただければ幸いです。

〇東京商工リサーチより

・2023年の「休廃業・解散」過去最多

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198287_1527.html#:~:text=2023%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%80%8C%E4%BC%91%E5%BB%83%E6%A5%AD%E3%83%BB%E8%A7%A3%E6%95%A3%E3%80%8D%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AF4,%E3%81%95%E3%82%92%E5%A2%97%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

・~2023年「全国社長の年齢」調査

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198339_1527.html#:~:text=%EF%BD%9E%202023%E5%B9%B4%E3%80%8C%E5%85%A8%E5%9B%BD%E7%A4%BE%E9%95%B7,%E3%82%82%E6%B5%AE%E3%81%8D%E5%BD%AB%E3%82%8A%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82

 (文責:京都事務所 清野 裕子)

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