1.人的資本経営について
そういえば昨年も千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の完全試合のことをこのコラムで触れましたが、今年も阪神タイガースの村上頌樹投手があわや完全試合という好投を見せてくれました。あと6人というところで代打を出されてしまい完全試合は実現しませんでしたが、そのまま続投して記録に挑戦してほしかったというのが正直な感想です。ただ続投して、もしヒットを打たれていれば、記録にも記憶にも残らなかったでしょうから、今回のことがずっと語り継がれることになるのであれば、それもよしとしたほうがいいのかもしれません。
いずれにしても岡田彰布監督が就任してから阪神タイガースは大きく変わりました。守りを重視するというビジョンを掲げ、役割や責任を明確にすることで、控えに回った選手もむしろ輝きをみせるような組織作りはさすがと言えるのではないでしょうか。相手がある話ですし、簡単に「アレ」が達成できるとは思いませんが、今年は秋まで楽しめそうです。
ところで、組織という話になると人的資本経営と言う言葉をよく耳にするようになりました。経済産業省のホームページでは、「人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」とあります。
これまでヒトはモノ、カネ、情報に並ぶ経営資源として捉えられていました。そもそも資源とは利用可能なものという意味であり、いかにその利用可能なものを使用するのか、消費するのかという考え方で管理されていたと言えます。
一方、人的資本経営では、企業は、従業員の教育や研修、業務プロセスの改善、報酬制度の改善など様々な手段を使うことで、従業員が成長し、スキルや知識を向上させ、その結果、企業の業務効率や生産性が向上し、競争力を高めていくというものです。
従業員が自己実現や幸福感を感じることができれば、企業にとっても従業員の高い定着率の維持が期待でき、ムダなコストを削減することができるようになるでしょう。
この春以降、上場企業などが発行する有価証券報告書には、女性管理職比率や男性育児休業取得率、男女の賃金格差といった項目について記載しなければならなくなりました。すぐさまこれで何かが変わるということはないかもしれませんが、情報の開示が進むとなると、企業のヒトに関する取り組みはどんどん加速していくことが予想されます。
そうした先には、人材の採用にも影響を与えることになっていくでしょう。人材不足倒産などという言葉が聞かれる中、中小企業にとって全く関係ない話ではありません。
企業がヒトにどのように向き合っていくのかについては、今、大きな曲がり角を迎えたと言えるのかもしれません。
【文責】ひかり社会保険労務士法人 徳光
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2.2023年4月から民法の相隣関係の規定が変わります!
隣地から越境している木の「根」は切ることができるが、「枝」は勝手に切ることができない。これは民法に規定されている条文ですが、一般的によく知られている有名なものではないでしょうか。今回は民法の改正によってこの規定を含む相隣関係の改正点についてご紹介いたします。
そもそも自分の所有している土地や建物と隣地所有者との間で、どんな場面で問題が発生するのでしょうか。いくつか事例を挙げてみます。
事例1
Aは所有する賃貸アパート及び敷地を売却したいと考え、売却にあたり土地の測量を行いたいと考えています。ところが、隣地が長年手入れされていなかったため草木によって隣地との境界がどこにあるのかわかりません。さらに、隣地上の建物はもともと住んでいたBが亡くなった後は空き家状態となり、Bのこどもがどこに住んでいるのか不明です。
事例2
Aは戸建てとその敷地を持っており、自宅として使用し生活してきましたが、最近隣地の樹木の枝がA宅の塀を越えて伸びてきています。落ち葉の処理は面倒だし、枝が邪魔で敷地内の行き来にも支障が出始めています。隣地宅に住んでいたBは数年前に亡くなり、現在は空き家でBにはこどもがいるようですが、所在はわかりません。
事例3
Aは戸建てとその敷地を所有し、生活していたところ、当該敷地内の水道管が破損したことにより、水道管を新しく設置することになりました。設置にあたる調査の結果、新たな水道管の一部を隣地に埋設しなければならないことが判明しました。しかし、当該隣地宅に住んでいたBはすでに亡くなり、現在は空き家でBのこどももどこにいるかわかりません。
いかがでしょうか。どの事例もなかなか隣地所有者の協力をすぐに得られそうにありませんよね。従前の民法の規定では上記のような事例に対して対応するのが難しく、所有者不明土地の隣地が放置され、土地の管理不全を引き起こしていました。そこで、その不明土地に隣接する土地への悪影響を解消するために、今回の改正が行われ、次の3つが大きく変わりました。
①隣地の使用請求に関する規定(現行民法209条)
改正法によって土地の所有者は、以下のような目的のためなら必要な範囲内で、隣地を使用することができるようになりました(改正民法209条1項本文)。
・境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕をする場合
・境界標の調査又は境界に関する測量をする場合
・改正民法233条3項による枝の切取りを行う場合
事例1では、今回の改正の境界に関する測量を行う場合を想定したケースとなります。従前の民法では隣地所有者に「使用を請求をすることができる」だけでしたが、改正後は「使用することができる」となりました。
②竹木の枝の切除及び根の切取りに関する規定(現行民法233条)
土地所有者が、竹木所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合、通常は竹木所有者による枝の切除を期待することはできません。また、竹木の枝は、その性質上、いずれまた伸びることが予想されます。これらのことに鑑みれば、土地所有者による直接の切除を認める必要性があるとされ、今回の改正により新たに規定されることになり、下記の場合には土地所有者が「自ら」切除することができます。
・竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
竹木の所有者が枝を切除する機会を与えられたにもかかわらず、相当の期間内に必要な切除を行わない場合には、土地所有者自身による切除を認める必要性が高いからです。
・竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
・急迫の事情があるとき
通常の裁判手続をとる暇がないような急迫な事情があるとき。例えば、地震により破損した建物の修繕工事のための足場を組むために、隣地から越境した枝を切り取る必要がある場合などです。
③継続的給付を受けるための設備の設備権等に関する規定(改正民法213条の2)
民法は、いわゆるライフラインに関する技術が未発達の時代に制定されたため、排水のための低地の通水に関する民法220条や通水用工作物の使用に関する民法221条を除き、各種ライフラインの設置における他人の土地等の使用に関する規定がありません。土地所有者が水道管などの設備の設置を希望する場合において、どのような根拠に基づき対応すべきかは明確ではありませんでした。そこで、改正法では、土地所有者がライフラインを自己の土地に引き込むための導管等の設備・他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地が所有者不明土地である場合でも対応できる仕組みも整備することになりました。
・継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権
土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができるとされました(改正民法213条の2第1項)。
この権利は、近隣の土地等の所有者間の権利関係を調整するものであり、土地の所有者が、他の土地に自己の設備を設置することにより当該他の土地を使用すること、また他人の所有する設備を使用することを認めたものです。仮に、他の土地の所有者、設備の所有者らによりその使用が妨害される場合には、土地所有者は妨害排除請求で対応することになります。
・設備の設置・使用の方法等
設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。
他の土地等を使用する者は、その所有者及び他の土地を現に使用している者に対して、あらかじめその目的、場所及び方法を通知する必要があります(改正民法213条の2第3項)。この通知は相手方を知ることができない、あるいは所有者が誰か分からない場合でも、公示による意思表示(民法98条)により通知することが可能です。
※公示による意思表示(主に、裁判所の掲示板に掲示と官報に掲載することで行う)
最後に
今回の改正で、すべての相隣関係が解決できるわけではありません。しかし、相隣関係において今まで曖昧だったところが明確化され、規定を設けることで、法的な根拠を持って事案に臨めることには大きな意味があります。そういった点でも、今回の改正は日々の実務の達成、ひいては所有者不明土地の解決に向けて大きく前進したと言えるのではないでしょうか。
出典「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)
【文責】ひかり司法書士法人 岡島
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3.これからの生前贈与について
はじめに
令和5年度税制改正において、相続時精算課税制度が改正されました。2024年1月1日以後に、贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。
この改正により、暦年課税と比較した場合のデメリットが少なくなっているため、相続時精算課税制度を利用する方が増えることが予想されます。
そもそも相続時精算課税制度とは?
「相続時精算課税制度」とは、受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税を計算し、生前に納付した贈与税を差し引いて納税する制度です。
この制度を受けられるのは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫などへの贈与に限ります。一度、相続時精算課税制度を選択した後に暦年贈与制度に変更することは認められません。
先代から後代へ財産を移したいけれども、贈与税が高いために次世代への財産の移動をためらってしまう状況を緩和するために2006年にできた制度です。贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた額に対して一律20%の贈与税が課税されますが、その贈与税は前払いの性質であり、相続時に相続税額から差し引かれ、相続税の方が少ない場合には差額が還付されます。
改正のポイント
(1)相続時精算課税適用者が、贈与により取得した財産の課税価格から「基礎控除110万円」を控除できることとなりました。また、(2)特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等されるその特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、110万円を控除した後の残額となります。
注目のポイント
(1)について、今までは少額でも贈与があった場合は申告が必要でしたが、改正後は基礎控除110万円以下の贈与であれば、申告不要となりました。
(2)について、今までは暦年課税贈与においては基礎控除110万円を受けることができましたが、相続時精算課税贈与には基礎控除がありませんでした。そのため、一度相続時精算課税制度を選択すると、110万円枠の活用ができなくなるデメリットがありましたが、今回の改正によりデメリットではなくなりました。
同時に改正される、生前贈与加算期間等の見直し
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続の開始前7年以内(現行3年以内)に被相続人から贈与により取得した財産の価額(財産のうち相続の開始前3年超~7年以内に贈与により取得した財産については、合計100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとなりました。
※2024年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。
この改正により、高齢の方の暦年贈与による相続対策の効果が薄れ、相続時精算課税制度に、より注目されることになるでしょう。
最後に
暦年課税贈与のメリットは、相続開始前7年超の期間の贈与について、相続財産から切り離すことができることです。贈与税と相続税の税率を比較して、相続時精算課税を選択することは今まで通り慎重な検討が必要です。また、暦年課税贈与と相続時精算課税贈与について、財産を評価する時期が異なることに注意が必要です。
父とのみ相続時精算課税贈与を行い、母からは暦年課税贈与を行うことにより、基礎控除を合計220万円受ける手法など、選択肢は様々です。
これからの生前贈与の最適な選択は今までとは変わりますので、ご検討の場合はぜひご相談ください。
【文責】ひかり税理士法人 松澤
4.顧問先紹介『バンブー様 京都駅前』
今回ご紹介する企業様は株式会社エイジェイクリエイション様です。
主な事業としては、ホテルやブライダル施設に特化した料飲サービスの総合アウトソーシング事業ですが、そこで培ったノウハウから、創業11年後に飲食店をオープンされました。
それが、今回ご紹介する『バンブー様』です。
京都駅八条口から徒歩5分。
店内には、ハリウッドを中心とする海外映画の写真が多数あり、昔なつかしのちょっとワクワクする空間を演出されています。
隠れ家的な、和洋折衷の居酒屋さんで、お料理一品一品にこだわっておられます。
単品メニューはもちろん、コースでも旬の食材をふんだんに使っておられ、大人の贅沢を満たしてくれるお店です。
団体での利用には2階の貸し切りがオススメです。
ひかり税理士法人でもしばしば、1階・2階ともに利用させていただいております。
3月末に2階を利用させていただいた時のコース内容の一品には、春の食材アスパラをふんだんに使ったローストビーフが・・・!
その他にも鮮魚のカルパッチョ、茶わん蒸し、チヂミなどなど、まさに和洋折衷のメニューで楽しめます♪
いつも素敵なひと時をありがとうございます。
お店もお料理も、沢山のこだわりがつまったバンブーさん。皆さまも是非一度訪れてみてください。
~お店の情報~
株式会社エイジェイクリエイション様(バンブー 京都駅前)
◆住所:京都府京都市南区西九条寺ノ前町15-1
◆営業時間:17:00~23:00(L.O.22:30)
◆定休日:不定休日あり
◆URL:https://banboo.gorp.jp/
◆TEL:050-5486-0266
【文責】ひかり税理士法人 公手