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Column

スタッフコラム

大津事務所
2024.02.06|経営

中小企業の未来を切り拓く人財の力

先週のスタッフコラムでは、「中小企業の未来を切り拓くAIの力」と題して、AIの可能性とその活用の効果についてお話しさせていただきました。
今週は、視点を変え、企業の競争力の源泉である「人財の力」バージョンでお届けします。

1.人財確保は至難の業

 皆さんもご存じのとおり、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は、減少し続けています。1995年に8,716万 人でピークを迎え、その後減少に転じ、2021年には7,450万人、総人口の59.4%となっています。約四半世紀で、1,266万人が減少しており(14.5%減)、今から約四半世紀後の2050年には5,275万(2021年から29.2%減)に減少することが見込まれています【出典1】

生産年齢人口の減少による労働力や経済への影響は社会問題ですが、これに加えて、仕事観の多様化、転職意向を持つ労働者の増加から、各企業において人財を確保することは容易ではありません。転職意向状況は、20代で65.9%、30代で58.5%、40代で49.8%となっており【出典2】、次世代の転職意向は非常に高い傾向です。

実際に中小企業の68%が人手不足感を感じており【出典3】、事業継続のために、人手不足を解消するための施策を講じる企業が増えてきました。

 

【出典1】内閣府「令和4年(2022年)版 高齢社会白書

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd121110.html

【出典2】株式会社リクルート「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20220922_hr_01.pdf

【出典3】日本商工会議所「人手不足の状況および多様な人財の活躍等に関する調査」
https://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2023/0928140000.html

2.選ばれる会社になるために中小企業が取り組む人事課題

 では、人財確保のために、中小企業は何に取り組めばよいのでしょうか?

求職者にも在籍社員にも選ばれる会社になるために、人事課題に取り組む中小企業は、近年急速に増加しています。

 多くの企業が取り上げている人事課題には、従業員視点での「仕事のやりがい、成長」、「労働環境の改善」、「処遇の見える化」、「エンゲージメントの高まり」や経営視点での「持続的な会社の成長のための目標設定・評価」、「次世代育成」等があります。

当法人の人事コンサルティングにておいても、「人事制度の(再)構築」、「管理職の育成」、「次世代管理職の育成」、「労働環境の整備」、「エンゲージメントサーベイ」をご支援させていただく機会が増え、前年と比較しても約3倍の件数となっています。

きっかけとなる問題意識は、「採用がうまくいかない」、「若手の定着率が低い」、「後継者不在」、「管理職のマネジメント力への不安」、「近年の経営目標が未達成」等があります。

きっかけは様々ですが、会社の存続、成長のために人事課題に取り組む企業は、取り組めば取り組むほどに新たな課題を形成し、取り組みを進化されています。時に苦悩を抱えられることもありますが、真摯に前向きに取り組み続けることは他社に人財力で差をつけることは間違いありません。

 

 また、人財確保のためには、会社の持続的な成長を実現する必要がありますが、そのためのマネジメントツールである人事評価制度の導入状況は、従業員数21~50人で57.2%、51~100人で72.5%、101人以上で87.2%となっており【出典4】、人事評価制度の有無別に見た売上高増加率は、人事評価制度を導入していない企業よりも導入している企業の方が高いという調査結果になっています。特に101人以上の場合は、導入していない企業は増加率(中央値)0.6%に対し、導入している企業の増加率(中央値)は10.4%となっています【出典5】

人事評価制度では、目標達成に至るプロセスにおいて、人財育成、マネジメント力の強化、新しいチャレンジによる成長、失敗から学ぶことによる組織力の強化など、「人財の力」を高めることを実現します。

 

【出典4、5】中小企業庁 「2022年版 中小企業白書」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b2_2_2.html

3.経営者と管理職が一体となった取り組みが成功のカギ

 ここまで、中小企業の人事課題への取り組みの傾向についてお話ししてきました。

組織・人財の改革は一朝一夕にはいかず、今やっていることが1年後、3年後に花開くというものです。人事制度の構築や管理職の育成等への取り組みをきっかけに、組織・人財の目指す姿を設定し、トライアンドエラーを繰り返しながら、課題に取り組み続けます。

 取り組み続けることが重要ですが、これがなかなか難しいのです。経営者一人では成し遂げることは非常に困難ですが、管理職が経営者と同じ問題意識をもって取り組む企業は、取り組みが持続される傾向にあります。また、その過程で管理職のマネジメントスキルや経営視点を高めることにもつながり、人材育成、後継者育成の観点でも有益です。

4.終わりに

  選ばれる会社になるための取り組みが、結果的には組織力や人財力を高め、企業の成長につながります。この中小企業の取り組みは、今後も高まり続けることでしょう。また、世の中的にも人的資本経営が注目されていますが、今後は人財に投資する企業が企業の持続的な成長と人財確保に成功する企業となりえるでしょう。

(人的資本経営:人材を企業の“資本”と捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上へとつなげていく経営手法のこと)

 

 「人」に関してお悩みの中小企業の経営者様、管理部門の人事担当者様が他の中小企業様が人事課題に奮闘されているご様子を知っていただき、一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

 

(文責:大津事務所  熊洞温子)

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