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スタッフコラム

大阪事務所
2023.10.16|税の最新情報

暗号資産に関する個人の税務上の取扱い

 ビットコインが2021年11月に市場最高値を更新し急落して以降、暗号資産市場があまり盛り上がっていない状況ですが2024年にビットコインが半減期を迎えるにあたって、再び暗号資産への注目が集まってくるのではないかというお話もお聞きします。
そこで今回は2022年12月に国税庁が公表した暗号資産に関する税務上の取扱いを含めて個人の税務についてご紹介したいと思います。

1.暗号資産取引の所得の区分

 暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得に区分される点は以前からの考え方と変わりはありません。
ただし今回の公表で暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合について、
下記の通り新しい基準を設けております。

 

■暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合:原則として、事業所得

■暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合:原則として、雑所得

 

上記の通り、事業所得での申告も可能となっております。
ただ収入金額の条件だけでなく、帳簿の保存が必要となりますので
事業所得で申告を考えられている方はご注意ください。

2.事業所得と雑所得

 暗号資産取引による利益が事業所得で申告できることの大きなメリットとして
以下の2つを挙げさせていただきます。

 

■事業所得が赤字の場合、給与所得などの他の所得と損益通算をすることができます。
 雑所得の場合は、同じ雑所得内の損益通算はできますが、他の所得との損益通算はできません。

■他の所得と損益通算をしても損失がある場合には、3年間の損失の繰越ができます。
 FX取引等のような雑所得でも取引の損失を3年間繰り越すことができるものもありますが、
 暗号資産の場合は損失の繰越ができません。

3.暗号資産の譲渡原価の計算

 暗号資産の売却等にかかる所得を計算するために譲渡原価の計算が必要となりますが、
その計算方法には「総平均法」と「移動平均法」という2つの方法があり、
暗号資産の種類(名称)ごとにどちらかを選ばないといけないという点にご注意ください。

 

まずは譲渡原価の計算の仕方ですが、下記の通りとなります。

 

①前年から繰越した年初時点で保有する暗号資産の評価額
②その年中に取得した暗号資産の取得価額の総額
③年末時点で保有する暗号資産の評価額

 

①+②-③=譲渡原価となります。

 

 上記の計算の際に出てくる「③年末時点で保有する暗号資産の評価額」の計算は
「年末時点での1単位当たりの取得価額」 × 「年末時点で保有する数量」で求めますが
この「年末時点での1単位当たりの取得価額」を計算する方法が
先程の「総平均法」と「移動平均法」になります。

 

1,総平均法
 同じ種類(名称)の暗号資産について、年初に保有する暗号資産の評価額とその年中に取得した
暗号資産の評価額の総額を合計しこれらの暗号資産の総量で除して計算した価額を「年末時点での1単位当たりの取得価額」
とする方法を言います。

計算式は下記の通りです。

 

①年初時点で保有する暗号資産の評価額 
②その年中に取得した暗号資産の取得価額の総額
③これらの暗号資産の総量

 

(①+②)÷③=年末時点での1単位当たりの取得価額

 

2,移動平均法
 同じ種類(名称)の暗号資産について、暗号資産を取得するたびに、取得時点の平均単価を計算し
その年の12月31日から最も近い日において計算された取得時点の平均単価を年末時点での1単位当たりの取得価額とする
方法となります。
取得時点の平均単価の計算式は下記の通りです。

 

①取得時点において保有している暗号資産の簿価の総額
②取得時点で暗号資産の数量

 

①÷②=取得時点の平均単価

 

 どちらの計算方法を選定するかは、初めて暗号資産を取得した年分の確定申告期限までに、
「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。
もし評価方法の届出書の提出がない場合には、評価方法は「総平均法」になります。

4.最後に

 暗号資産の譲渡原価を含め、暗号資産の売却等に係る所得金額の計算については、暗号資産交換業者から送付される
「年間取引報告書」を用いて、国税庁のホームページに掲載されている「暗号資産の計算書」を作成することで
上記のややこしい話を完全に理解していなくても簡単に計算することが可能となっているようです。
 ただし、「年間取引計算書」を用いて、国税庁の「暗号資産の計算書」を作成する場合は
「総平均法」での計算となりますのでご注意ください。

 

引用:国税庁HPhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
                                                          (文責:大阪事務所 横峯)

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