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2023.07.03|税の最新情報 節税

総務省よりふるさと納税の改正事項が広報されました

 2008年5月に導入されたふるさと納税。
 導入年である2008年における同制度を利用した寄付金額が総額72億円だったのに対し、2019年には4,875億円(総務省発表より)に達するなど、制度としてすっかり御馴染みとなりました。
 このふるさと納税について、先日(6月27日)に総務省から新たな改正内容が広報されましたのでご紹介いたします。

1.ふるさと納税の自治体指定について

 ふるさと納税により寄附を受け付けたい自治体は、毎年10月から翌年9月までの1年間を指定期間とする総務大臣からの指定を受ける必要があります。
 有名な「返礼品は寄付額の3割以下」といったルールを守らなかった自治体などは、総務大臣からの指定を受けられず翌年度にはふるさと納税の対象自治体から外されるケースもあります。

2.来年度の改正内容

 総務省は2023年6月27日に、次回(2023年10月~2024年9月)の指定期間におけるふるさと納税の自治体指定に際して、以下の改正内容を広報しました。

 国税庁HP「ふるさと納税の次期指定に向けた見直し」(令和5年6月27日)
 

 

〔主な改正内容〕

 

①募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とする(募集適正基準の改正)

 これは「経費率5割ルール」と呼ばれているもので、返礼品の調達費用が寄付額の3割以下という有名なルールの他に、送料などの経費も含めた費用総額は寄付額の5割以下にするものとされています。
(でなければ自治体には実質的に寄付額の半分未満しか残らないということになってしまいます。)
 ところがこの「経費」の範囲として従来は含まれていなかった寄附金の受領証の作成・発行費用なども、自治体によっては相当な負担額を要していることが判明しました。
 今回の改正については、そうした付随費用とすべきものも含めたうえで、寄付額の5割以下にするように改正されることとなったものです。

 

②加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める(地場産品基準の改正)

 こちらは熟成や精米などの加工を必要とする食品について、従来は加工や製造の主要部分を自治体内で行っていれば返礼品として認められていましたが、今後は食品のうち熟成肉と精米についてはその原材料も同じ都道府県産であることが必要となりました。
 現状、他の都道府県産の食品を調達して加工したものを返礼品として提供している自治体も見られるため、その対応策となります。

 上記を踏まえますと、①により返礼品の量・質が減少したり、取扱いが無くなる返礼品も出てくるかも知れません。
 ②については、熟成肉や精米の産地がより明確になるという点で利用者にメリットのある改正かとも言えます。

3.ふるさと納税を利用する際の注意点

 今回の改正については、自治体にとっては返礼品の見直しなどを迫られる改正とはなりましたが、利用者からするとさほど大きな改正とはなりませんでした。
 ということで、ふるさと納税を利用される際の注意点について改めてご紹介させていただきます。

 

 

■利用限度額

 ふるさと納税により寄附をした場合、控除される税額には限度額が設けられていますので、まずはこの限度額を超過しないことが肝心です。

 ふるさと納税の限度額については、多くのふるさと納税ポータルサイトなどで試算することが可能ですので上手く利用しましょう。

 ただこうしたポータルサイトでの試算機能については、給与収入を主とするサラリーマンなどを主なターゲットとしているため、不動産賃貸オーナーや個人事業主などは試算が難しいケースも多いようです。

 当社では個人顧問先様に対してふるさと納税の限度額試算なども行っておりますので、お気軽にお問合せください。

 

■ワンストップ特例の適用もれ

 ふるさと納税の利用による確定申告などの手続き負担軽減のため、2015年から「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設され、ふるさと納税を利用する自治体が5自治体以内の方は、この特例を利用することでふるさと納税を適用するためだけに確定申告をすることは必要なくなりました。

 ただしこの特例には注意点があり、確定申告をすることとなった場合にはワンストップ特例は適用されません。
 つまりサラリーマンなど会社が年末調整をしてくれている方が、当初は確定申告をする予定が無かったためワンストップ特例を利用していたものの、やはり医療費控除などを利用しようとして確定申告をすることとなった場合には、忘れずにふるさと納税についても申告しておかないと、適用されていると思い込んでいたワンストップ制度は取消処理をされているため、せっかく寄附をしたのに税額控除がされないことになってしまいますので注意しましょう。

※この場合でも、確定申告書を提出した日から5年以内に「更正の請求」という確定申告の修正手続きをすることで、ふるさと納税の適用を受けることができます。

 

 

■返礼品は一時所得の課税対象

 ふるさと納税で受け取った返礼品については、所得税法上は非課税とはされておらず、一時所得として課税対象とされています。
 ただし一時所得には年50万円の特別控除がありますので、他に多額の満期保険金の受取りがある場合を除き、一般にはふるさと納税の返礼品に対しては課税されないケースが多いと追われます。

 弊社も税理士事務所ですので、確定申告の時期には多くのお客様の確定申告業務をさせていただきます。
 会社役員など高額所得者のお客様の中には、ふるさと納税の寄附金受領者が100枚以上、寄付総額が数百万円という方もいらっしゃいますので、そうした場合にはふるさと納税の返礼品相当額を一時所得として確定申告計算に織り込む必要があります。
(個々の返礼品が何円相当かは公開されていないため、実務的には寄付額の3割相当を一時所得として計上しているケースが多いかと思います)

 

■ポータルサイトの利用による証明書添付の簡素化

 通常ふるさと納税を利用したときは、寄付の度に各自治体から送付されてくる寄附金受領書を保管しておき、それを確定申告の際に添付する必要があります。
 ただし多くの自治体に寄附をするケースだと、添付すべき寄附金受領書の枚数も多くなりますし、紛失してしまうケースも考えられます。

 ふるさと納税を利用する場合、多くの方は各自治体のHPなどから直接寄附をするのではなく、著名なふるさと納税のポータルサイトを利用されている場合が多いと思いますが、そうしたポータルサイトの中には、国税庁長官の指定を受けているサイトがあります。
 国税庁から所定の指定を受けたポータルサイトの利用者は、そのポータルサイトから出力した年間の寄付額等を記載した証明書を確定申告に添付することで、個々の自治体から発行された寄附金受領書の代わりとすることができますので、ふるさと納税を多くされる方はご利用をお勧めします。

 

 (参考)国税庁HP「ふるさと納税に係る寄附金控除に関する証明書等について
    上記の対象となる指定ポータルサイトの一覧などが掲載されています 

4.最後に

 ご承知のとおり、ふるさと納税を利用しても所得税・住民税を合わせた納税額そのものが減少する訳ではないため「節税(税金対策)」ではありませんが、「返礼品の受け取り」という経済的なメリットはありますので、制度そのものに対する意義等については昔から賛否両論ある制度ではありますが、現存している間は上手く活用したいところです。

(文責:京都事務所 山下)

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