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思惑は成就したか-教育や結婚・子育て資金贈与の利用状況~週刊ひかり vol.8

2019.05.20 経営

 日本銀行の資金循環統計によると、個人の保有する金融資産は1,830兆円。その内訳は、現預金984兆円、保険・年金523兆円、株式・投資信託242兆円と報じられていますので、その過半が現預金で保有されています。証券市場の活性化のために、現預金から株式へのシフトを進めるべく「NISA」などの仕組みが喧伝されていますが、やはり頼れるのは「現預金」ということのようです。一方、総務省の家計調査報告には、「世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高」という資料があり、40代までは負債超過、50代でようやく貯蓄超過に転じ、60代や70代では負債残高が僅かになっていることが分かります。教育費や住宅ローンに追われる世代から、それらが一段落して貯蓄超過に至る世代へと変化していく様子がデータで明らかにされています。
 さて、こうした状況下で消費を喚起して景気を浮揚させるには、60代や70代の世帯が保有する金融資産、それも現預金をどのようにして40代以下の世帯にスムーズに移転させるかがポイントになります。そこで考案されたのが、「祖父母などからの教育資金贈与の非課税制度」や「父母などからの結婚・子育て資金贈与の非課税制度」といった税制です。景気浮揚策として税制が出動するのはいつものこととはいえ、果たしてこれらの制度は当初の思惑通りに機能しているのでしょうか。
 実は、国税庁が先月公表した2018事務年度のデータによると、教育資金贈与の利用者は38千人で利用額が2,300億円、一方の結婚・子育て資金贈与に至っては利用者わずか920人で利用額も38億円にとどまっています。つまり、これらの制度は残念ながら当初の思惑通りの効果は上げられていないのです。
 そもそも、扶養義務者が生活費や教育費を負担したところで贈与税など課税されるはずはありませんし、たとえ高額であるからといって課税の理由になどなりません。ちなみに、筆者の子供は私立の医学部を卒業して医者になりましたが、6年間の決して安くない学費(実は予備校の費用も…)について贈与税など一銭も払ってはいません。 つまり、扶養義務者が必要な都度、必要な生活費や教育費を負担しても課税などされない事実を横へ措いておいて、一括してまとまった資金(例えば、1,000万円とか1,500万円)を贈与したら課税するぞと脅しつつ、それを非課税にするとの甘い囁きで、現預金の世代間移転を画策したのですが、そうは簡単に問屋は卸してくれなかったということのようです。

 

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