私たちひかり税理士法人では、広報活動の一環として「HAGレポート」を作成し、 クライアント企業をはじめ関係先の方々にお届けしています。
今年も既に折り返し点を過ぎ、京都では祇園祭のコンチキチンの鐘の音が聞こえる季節となりました。今月から「たばこ税」が引き上げられ、小売価格が一本あたり一円程度値上げされましたが、愛煙家の皆さん、どうかご自愛ください。
さて、昨年の税理士法改正に引き続き、去る五月三十日には公認会計士法も改正され、来年四月一日から施行されることになりました。試験制度の改革を含む大幅な改正で、私たちの業界に与える影響も少なくありません。時代は着実に進み、そして環境は刻々と変化しつつあることを痛感します。
そのような中で、税制に関する話題にも事欠きません。消費税の増税はあたかも既定路線かのような発言を耳にするにつけ、どうやら税率の二桁化は避けられない気配です。景気の先行きが不透明な中、その導入時期には慎重であってほしいと願うのは私だけではないと思います。さらに薄く広く課税するという観点から所得税の人的控除の見直しや相続税の基礎控除の引き下げが検討の俎上にのぼっているようです。
一方、景況は依然予断を許さない状況にあり、先月には今年に入って十社目の公開会社が破綻し、地元京都でも準大手ホテルの破綻をはじめ、業界における勝ち組と負け組の色分けがはっきりしてきているように思います。
そのような中にあって、私たちは関与先様の勝ち組居残りレースをお手伝いするべく、今まで以上に研鑽に励まねばならないと考えています。経営に対する知恵と見識、そして会計や税制といった諸ルールに対する深い造詣が勝ち組と負け組の分かれ道になるのではないかと思っています。何なりとお申し付けいただき、私たちを上手にご活用いただければ幸いです。 ひかり税理士法人HAGレポートの夏号をお届けいたします。
平成15年6月17日、小泉総理は総理大臣官邸で、政府税制調査会の石弘光会長から中長期的な税制のあり方をまとめた「少子・高齢社会における税制のあり方」と題する答申を受け取りました。 この答申は、本年1月に小泉総理より平成15年度税制改正を踏まえ、昨年6月の同調査会答申「あるべき税制の構築に向けた基本方針」の考え方のうち少子・高齢社会を支える税制などの課題について、さらに検討を深める指示を受け発表されたものです。急激な高齢社会の到来と国の歳出額の約半分しか税収で補えない現実から、法人税を除いて、所得税及び消費税中心に相続税も含めて幅広く国民に負担増を求める内容になっています。
同答申では消費税率の将来2桁への引き上げが謳われていますが、皆さんはどのようにお考えでしょうか。そこで、少子・高齢化社会の税制は消費税と所得税どちらを中心にすべきか、いわゆる直間比率についてのどのような議論がなされているのか取り上げてみました。
所得税から消費税への税制シフトについては、上記のような論点があります。そのシフトへの批判に対抗するため、国は平成15年度税制改正で免税点及び簡易課税制度適用基準を引き下げ、益税の解消を図るとともに、低所得者層の負担増回避のため食料品など生活必需品への軽減税率の導入が検討されています。このように、消費税率の引き上げは避けられそうにありません。
日本の国庫の将来を考えると、真剣に税制についての議論をしなければならないのですが、我々の税金がザルのように使われている現実を見ると、思考する力が失われてく思いです。小泉改革も遅々として進まず歳出削減は実現しそうにありませんが、皆様のご感想はいかかですか?
平成15年度税制改正において、相続時精算課税制度が創設されたことは前号にてお話しいたしましたが、今回はこの制度についてより具体的に、注意すべき点、あるいはどのような利用の方法があるのかについてお話ししたいと思います。
ではまず、おさらいとして制度の概要について簡単に触れておきたいと思います。
この制度は、生前贈与について受贈者の選択により、現行の贈与税制度に代えて、贈与時に贈与財産に対する「贈与税」を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産を合計した財産価額を基に計算した相続税から、既に支払った、「贈与税」を差し引くことにより贈与税・相続税を通じた納税をすることができる制度です。
適用要件としては、対象者が贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)であること。また、選択に係る最初の贈与を受けた年の申告期間までに、所轄税務署長に対して、その旨の届出を贈与税の申告書に添付すること等があります。
すでにご説明しましたように相続時精算課税制度は相続時に税額を再計算する制度です。確かに「2,500万円まで贈与時には非課税」ですが決して「無税」ではありませんし、相続時において再度計算しなおすことで精算をする制度であることに十分ご注意下さい。
相続時に贈与財産と相続財産を合計し精算する制度であることをご理解いただいたところで、贈与した財産の評価基準はいつの時点なのでしょうか。相続時の評価?それとも贈与時の評価?答えは贈与時点の相続税評価額となります。そして、ここが今回の改正の有効活用できるかどうかのポイントのひとつとなります。贈与の対象とする財産を決めるとき充分検討すべきでしょう。
現行の贈与税制度のメリットを再度確認しておきましょう。110万円の基礎控除が毎年利用できる現行の贈与税の制度は相続時に精算をする必要はありません。また、相続時精算課税制度を一度選択したら後戻りできません。すなわち相続時精算課税制度を選択した後では毎年110万円まで無税である現行の贈与税の制度は二度と適用できないということです。各々の状況にあった贈与を検討の上選択していきましょう。
相続時精算課税制度を適用し、納付済みの贈与税があるときは相続税の申告を失念すると還付が受けられなくなります。贈与から相続までに長期間を要する場合には特に注意が必要です。
前号にて『相続時の精算課税制度はホントに有利?』というお話をいたしましたが、節税の観点からは必ずしも有利な制度とはいえないこの制度を、どの様に利用すればいいのでしょうか。 一つの利用方法として考えられることは、この相続時の精算課税制度は、生前贈与を促進させる結果、遺言と相通ずる意味を持ちその役割を果たしてくれるということです。
持っている財産をどのように子孫に承継させていくかを生前に決めておくということでは、今までは遺贈以外では現行の贈与しかありませんでした。しかしながら、この現行の贈与ですと110万円を超えると贈与税がかかります。また、相続税がかからない人でも年110万円を超える生前贈与に対しては贈与税が課税されるので生前での財産の移転は敬遠されていました。それがこの制度の創設により生前贈与について2,500万円まで贈与時に税金がかからなくなりました。仮に2,500万円を超える贈与をしても、その超えた部分については20%の一定税率の課税で済みます。そして、その贈与者の死亡による相続があっても相続税がかからなければ還付してくれます。つまり、遺言による財産処分と併せて、相続時精算課税を上手く利用すれば贈与者が存命中にその思いを子孫に残すことが可能となります。
節税とは違った利用法ではありますが、相続の税金面以外から捉えた活用の仕方として考えられるとこの制度も見直される部分があるのではないでしょうか。
繰延税金資産を理解していただくために、まずこのお話から始めたいと思います。
日ごろ税務署に申告されている申告内容は、税法の基準で申告を行っていることは言うまでもありませんが、この基準は日本国における会計基準と必ずしも全ての処理が一致しているわけではありません。これを聞けば「何故?」、「どうして?」という疑問が生じてくると思います。これは、企業会計の基準と税法の所得計算の基準との間で利益算出に大きな目的の隔たりがあるからです。
| 基準 | 目的 |
| 企業会計原則 | 企業の収益力の算出 |
| 税 法 | 課税所得算出 |
上の表の通り、二つの基準には大きな目的の隔たりがあります。企業会計の基準である企業会計原則では、企業の収益力の表示を目的とし、投資家の判断を誤らせないようにすることが最大の目的であるのに対して、税法では課税の公平を図る観点から税金を課税するベース、課税所得の算出が最大の目的となっています。このため投資家保護を目的とする企業会計と、租税の徴収を目的とする税法との間で処理基準が異なる取引が生じてくるわけです。
ここからは処理基準が異なる取引の一例を挙げていきたいと思います。 @処理を行う事業年度が違うケース(一時差異)
| 企業会計原則 | 税法 | |
| 事業税 | 事業税が費用になるのは、課税される所得が発生した事業年度 | 事業税が損金になるのは、課税される所得が発生した事業年度の申告書を提出した日が属する事業年度 |
| 貸倒損失 | 貸倒損失が費用となるのは、当該債権を回収不能と企業が判断した事業年度 | 貸倒損失が損金となるのは、税法上一定の基準を満たした事業年度 |
A会計上は費用になっても税務上は損金にならない取引(永久差異)
交際費(例外あり)・延滞税 ・交通反則金 ・役員賞与
などがこれにあたり、これらは会計上は費用となった支出金額の一部、若しくは全額が、将来にわたって税務上損金として処理することができないことになるものです。
以上ご説明した通り、会計上と税務上の考え方には隔たりがあります。この隔たりを放置したまま決算書を作成すれば、会計上の税引前当期利益と税務上の課税所得とが一致しないことにお気づきでしょうか。会計上の税引前当期利益に、税務上の課税所得から求めた当期の税額を法人税等として表示すれば(下記設例参照)、当然表示上の税率(法人税等÷税引前当期利益)にばらつきが生じることになり、本来の姿が全く見えてこないことになります。その歪みを修正する会計基準が、税効果会計と呼ばれる会計基準です。これは、会計上の税引前当期利益に対し、実行税率に合わせた税額を表示しようとするものであります。
(例)税引前当期利益 15,000千円、
税務上現段階で費用にならない貸倒損失 5,000千円、実行税率40%の場合
@税効果会計を適用しない場合
税引前当期利益 15,000千円
法人税等 8,000千円 (53%)
当期利益 7,000千円
A税効果会計を適用した場合
税引前当期利益 15,000千円
法人税等 8,000千円
法人税等調整額 △2,000千円 6,000千円 (40%)
当期利益 9,000千円
※法人税等(15,000千円+5,000千円)×40%=8,000千円、事業税はこの例では考慮外としています。
@の場合とAの場合では、表示上の税率が違うことがおわかりいただけたでしょうか。Aの税効果会計を適用した場合の「法人税等調整額」が、会計上と税務上の歪みを修正するものであり、繰延税金資産を構成するものであるのです。繰延税金資産とは、会計上と税務上の一時的な差異によって生じる会計上の立場からみた税金の繰延分であり、将来の税金を先払いしているものと考えることができます。(繰延税金資産は、資産の部に表示されます。)当然、将来その一時的な差異が解消されれば、繰延税金資産は再び「法人税等調整額」として将来の表示上の税金項目を構成することになるわけです。